グログラン伝説

帽子を彩ってくれるものに、リボンがあります。リボンをちょっと変えてみるだけで、帽子全体の印象が一変するほどです。

あれは専門用語では「ハット・バンド」と呼ぶんだとか。帽子に巻くための帯だから、「ハット・バンド」なのでしょう。

ハット・バンドによく使われるのが、グログラン。いや、ハット・バンドの多くはグログランである、と言ってもそれほど大きな間違いではありません。

グログランは畝織りの絹地で、昔はよく貴婦人のイヴニング・ドレスなどにも使われた生地なのです。張りと重みがあり、優雅な絹地だったからです。

グログラン grosgrain はもともとフランス語で、「大きな粒」の意味があったという。そして中世に遡る古い布でもあります。

絹地のグログランと「グロッギー」が関係しているのですから、面白い。

1830 年代の英国に、エドワード・ヴァーノンという船長がいた。いつもグログランのコートを羽織っていたから、仇名が「オールド・グロッグ」。

このオールド・グロッグが1840年頃に「ストレートの酒禁止令」を出した。その時代の船乗りは皆、ラム酒を飲んでいた。これでは仕事に差し支えるので、「水割りにせよ」と命じた。

ところが水割りラムのほうが、かえって多く飲むようになって、みんなふらふら。それでふらふらのことを「グロッギー」と言うことになったのです。もちろん、「オールド・グロッグ」こと、エドワード・ヴァーノンに因んでいるわけです。

まあ、それはともかくグログランが古い時代から、広く用いられていたのは、間違いないでしょう。