トレンチ・ハットの物語 #007

トレンチ・コートは1910年代のイギリスで完成されたと、考えられています

その時代のトレンチ・コートは必ずしも「軍服」ではなかった。

トレンチ・コートを必要とする軍人が、自分で注文して、作ってもらったのです。
言い換えれば、たいへん高価なコートだったのでしょう。

最初期のトレンチ・コートは、ウール・ギャバジンであったかも知れません。

ウールを強く撚って、ギャバジンに仕上げると、水を含んだ時、糸が膨張する。
膨張するとそれ以上は水を通さない。
そんなふうに考えたのでしょう。
水を含んで糸が膨張するのは、綿糸も同じことですが。

トレンチ・コートを戦場で着ると、当然汚れる。

泥だらけに。
では、汚れたトレンチ・コートはどうしたのか。

バーバリーならバーバリー、アクアスキュータムならアクアスキュータム、それを仕立ててもらった店に送り返す。

店でトレンチ・コートを洗濯し、もう一度防水加工を施して、再び戦地に送り返した。無料で。
つまりそのアフターサービスも最初の金額に含まれていたのでしょう。

そんなわけで当時の英国将校は着換えのためのトレンチコートを何枚か、持っていたはずです。

話は変わりますが、昔、銀座に「チロル」という登山用品店がありました。
小さな店ではありましたが、高級店でした。
「チロル」では注文で無双のトレンチ・コートを仕立てたという。

無双とは、無双仕立てのこと。つまり裏地にも表地を張る手法。
「ダブル・ライニング」とでも言えば良いでしょうか。
ただし生地が倍かかるわけですから、贅沢でもあります。
が、いわば「二重トレンチ・コート」ですから、防水性、保温性は完全だったでしょう。

トレンチ・コートがあるなら、トレンチ・ハットがあっても良い。
レイン・ハットでもあり、ボギーの気分で被るも良し。
その生地がコットン・ギャバジンであるのは、もちろんです。

スタイルはカウボーイ・ハットが参考になるかも知れません。

ヤマが高く、ツバが広いのはレイン・にも好都合ですから。