ワーグナー・キャップの物語 #012

ワーグナーは、リヒャルト・ワーグナーのことです。

でも、帽子の話ですからぜひ聞いてください。

リヒャルト・ワーグナーは1813年、今のドイツのライプツィヒに生まれています。
世を去ったのは1883年、イタリアのヴェニスで。
つまり典型的な十九世紀の音楽家だったわけです。

ワーグナーはたしかに音楽の天才でした。
と同時にこの上なく「人間的な」人物でもありました。

十九世紀の音楽家でワーグナーほど波瀾万丈、人生謳歌した人も珍しいのではないでしょうか。
ひと言で言って、ドラマそのままの人生でありました。

1849年には国を追われて、スイスに亡命。
これは政治運動に関係したためです。
スイスでは富豪の、オットー・ヴェーゼンドンクの援助を。
ところがそのオットーの妻、マティルデを愛してしまう。

この最中に作られたのが、『トリスタンとイゾルデ』。

今ではワーグナーの傑作とされています。
もちろんワーグナー自身の恋模様が投入されてもいます。
まあ、人生とは不思議なものです。

ワーグナーは芸術家であったからでしょう、当時上流階級が好んだトップ・ハット姿はあまり遺っていません。

多くはブレトン・ベレーに似た帽子を被っています。
その中のひとつに、ブレトン・ベレーとターバンを足して二で割ったようなスタイルがあるのです。

生地はヴェルヴェットに似ています。
似てはいるのですが、まるでターバンでも巻いたかのように襞がたくさんあるのです。
ゆったりとした大黒帽にランダムなプリーツを寄せた感じ。

もうなんとも名づけようがないので、「ワーグナー・キャップ」としてはどうでしょうか。