夏帽子伝説 #024

夏の帽子は必要不可欠のものです。

日射病になってはつまりませんから。
木陰が涼しいように、帽子もまた涼しい。

木陰をいつでも持ち歩いているのにも、似ています。
夏帽はたしかに日陰を作ってくれるもの。

でも、どうせ被るなら自分の好きな帽子を被りたいものです

明治三十五年ころの話なんですが。

それというのも、詩人の萩原朔太郎がまだ学生だった時代のことです。
これは萩原朔太郎の『夏帽子』という随筆に出てくる物語。
もちろん季節は、夏。

その頃、萩原朔太郎が憧れたのが、一高の制帽。
それは麦藁帽子で、赤いリボンが巻いてあった。
でも、朔太郎は一高の生徒ではない。
それでも被ってみたい。

とうとう朔太郎は一高の夏帽子を、買う。

買って、避暑に。
行った所は、日光、中禅寺。

この中禅寺で、ある少女と出会う。

朔太郎が歩き疲れて一休みしていると。
「滝の方へ行くのは、こちらの道で良いのでしょうか?」
この少女は重ねて言う。
「あなたは一高の方ね……」

朔太郎はなんとも返事の仕様に困ったという。
で、結局、人間違いされることに。

たったひとつの夏帽子からも、物語が生まれることがあるんですね。