ギフト・ハットの伝説 #054

新宿に、「紀伊國屋書店」というのがあります。

新宿が本店で、いろんなところに支店があります。
でも、どうして新宿にはじまった本屋が、「紀伊國屋」なのか。

「紀伊國屋書店」をはじめた田辺茂一は、新宿生まれの、新宿育ち。
しかし。
はるか昔の先祖は、紀伊國、和歌山の出身だったから。

田辺茂一が小学生の時。
お父さんが「丸善」に連れて行ってくれた。
その「丸善」の雰囲気に、感動。
これが「紀伊國屋書店」へとつながったのでしょう。

新宿の、小さな、一書店が、どうして大成功したのか。
若い、きれいな女の子を店員としておいたから。
もちろん、それだけではないでしょう。
でも、初期の「紀伊國屋書店」に美人店員が多かったのは、ほんとうのことです。

田辺茂一が好きになった女の人。
それは、美人の中の美人、水谷八重子だったのです。

若い日の田辺茂一、「どうしても、水谷八重子と結婚したい」。

ある人を介して、新宿の「不二家」で会って。
「不二家」で、実物の水谷八重子に会うと。
あまりものお綺麗さに、田辺茂一、ひと言も言葉が出なかった。
結局、結婚には至らなかったそうです。

ふだんの田辺茂一は、冗談好き、ダジャレ好き。
ある時、目下、売り出し中の、作家に偶然で会って。
「君の新作が出たらしいね?僕に一冊、くれないか?」。
「田辺さん、紀伊國屋にも置いてありますよ。」
これに対する、田辺茂一の言葉。
「君ねえ、社長の僕が、万引できるはずがないじゃないか。」

田辺茂一が好きだったのがもうひとつ、バア。
ひと晩に、十軒はまわった。大きな鞄を抱えて。
中にはたくさん帽子が入っていて。
作家に会うごとに、帽子をプレゼントするのが、趣味だったそうです。

そういえば、作家で帽子好きの人、多いですよね。
梶山季之も必ず帽子を被っていたものですが。
もしかして、田辺茂一にもらった帽子から、帽子愛好がはじまったものかも知れませんね。

これからは大いに、帽子をプレゼントすることにしたいものです。