バースデイ・ハットの伝説 #056

バースデイは誰にとっても、一年に一回だけあります。

愉しいものです。
嬉しいものです。

「バースデイ」のつく言葉にも、いろいろとあるようですが。

たとえば、「バースデイ・スーツ」。
この「バースデイ・スーツ」には、「裸」の意味もあるんだそうです。
人がまさに産まれてきた時に着ていたスーツ。
それはいうまでもなく、「裸」。

そんなわけで「バースデイ・スーツ」は時に「裸」の遠まわしの表現になるんだとか。

バースデイには贈物がつきものですが。

病院への贈物にも、なにかと心悩ませるものです。
たとえば、親友が足を骨折して、入院。
そんな時のお見舞いには、何を持っていけばいいのか。

「蜂蜜」。

少なくとも、ジョン・ル・カレの、『死者にかかってきた電話』には、そんな話が出てきます。
『死者にかかってきた電話』は、ジョン・ル・カレのスパイ小説、第一作。
ジョン・ル・カレはこの時、現役の秘密諜報部員だったのですから、面白くないはずがありません。

スマイリーが入院して、メンデルが見舞いに行く。
この時、フォートナム&メイソンの蜂蜜を持って行った。
その後で、「養蜂技術」の本まで持って行くのですから、念入りであります。

ところで、メンデルは見舞いに行くのに、新調の帽子を被っている。
それを、スマイリーに褒められての、科白。

「ちょっとしたものでしょう。これも隠退祝いでしてね。」

もし隠退祝いがあるのなら、「誕生祝い」があって良いでしょう。

自分の誕生日には自分で帽子を贈りましょう。

「バースデイ・ハット」。

少なくとも、一年にひとつは好みの「ちょっとした」帽子が殖えてくれるわけです。
もし、その新調の帽子を褒められたなら、こう言いましょう。

「ちょっとしたものでしょう。これも誕生祝いでしてね。」