絹帽子の物語 #055

「綿帽子」のことは、たぶんご存じでしょう。

今は、花嫁衣裳のひとつとなっています。
白無垢の、日本の伝統の婚礼衣裳には、「綿帽子」が欠かせません。
純白の絹で作った、ちょっと頭巾のような帽子のことです。

江戸時代、上流階級の女はたいてい「綿帽子」を被ったんだそうです。
特別の婚礼衣裳ではなかった。
江戸、宝永の頃までは。
つまり、ふだんの流行帽だったのです。
また、「綿帽子」を髪に留めておくための銀の飾りも、凝ったのだそうです。
自分の好みの役者の紋所をあしらったりして。

「雲やこれ 雪をいただくふじのねは 老せぬ綿ぼうしかな」

これは、山名金吾の詠んだ歌。
とにかく江戸期に「綿帽子」が流行ったのは、間違いないでしょう。
それが今は、着物の盛装とされるわけです。

「綿帽子」ならぬ、「絹帽子」の話。

まあ、そうは言っても綿帽子もまた、絹地ではあるのですが。

シルク・ニットで仕上げられるものに、ニット・タイがあります。
あれは専用の「クロシェット」と鉤針で編むもの。
応用範囲が広く、皺にもならず、重宝するネクタイです。

ネクタイが編めるのなら、帽子も編めるはず。
シルクの、ニット・キャップ。
帽子の中心から編みはじめて、だんだんと円形に、だんだんと半球形に。

シルクのニット・キャップは、頭へのフィット性が、高い。
綺麗な色も、愉しめる。
畳んで、小さく、皺にならない。
いつでも、どこでも、被ることができて。

なんだか「絹帽子」が理想の帽子に思えてくるのですが。