スカル・キャップの伝説 #061

『マイ・フェア・レディ』という名画があります。

これはもう、説明の必要がないくらいの傑作でしょう。

花売り娘、イライザに扮したのが、オードリー・ヘップバーン。
ヒギンズ教授に扮したのが、レックス・ハリスン。

『マイ・フェア・レディ』の中で、ヒギンズ教授が被ったアイリッシュ・トゥイード・ハットを後に「レックス・ハリスン・ハット」の名前で呼ばれるようになったのは、ご存じのことでしょう。

『マイ・フェア・レディ』は、ミュージカル映画であります。
この映画の基になったのが、『ピグマリオン』。
『ピグマリオン』は、戯曲であり、演劇であります。
ジョージ・バーナード・ショオが、1913年に発表した物語なのです。

1914年に、ロンドンの「ハア・マジェスティック劇場」で公演された時は、ずいぶんと叩かれたものです。
いくら演劇とはいえ、イライザの遣う下町言葉があまりに下品。
当時の新聞評は、そんな風に酷評したそうです。

ジョージ・バーナード・ショオが、『ピグマリオン』で言いたかったのは、実は英語の「発音」だったのです。
そのために登場させたのが、ヒギンズ教授。
ヒギンズ教授は、相手の言葉をひと言耳にしただけで、彼の生まれた場所、行った学校、住んだ場所を明確に言い当てた。
まるで言葉の魔法使いのような人物なのです。

そしてヒギンズ教授のモデルとなったのが、スゥイート。
ヘンリー・スゥイート。
当時、オックスフォード大学の、音声学教授だった人。
ただし学問に厳しいお方で、ついた仇名が、「ビター・スゥイート」だったという。

ヘンリー・スゥイートが、「ヒギンズ教授」のモデルだったのは、バーナード・ショオ自身、『ピグマリオン』の序文の中で明らかにしてもいます。
また、この「序文」の中には、

「いつも頭にビロードのスカルキャップを被っているのが印象的で…………」。

とも、書いています。

これもまた、英国の音声学者だった、アレクサンダー・J・エリスの様子。

スカル・キャップは、頭にフィットした、小型の室内帽。
ヴェルヴェットのスカル・キャップ。
ぜひ一度、被ってみたいものです。