ギャバン・キャスケットの物語 #064

男の子なら多かれ少なかれ、「ブラコン」ということがあるのではないでしょうか。

「ブラザー・コンプレックス」。
「兄コン」。

たとえば私の場合なら、ジャン・ギャバンでしょうか。

ジャン・ギャバンは恰好いい。
ジャン・ギャバンには憧れます。
ジャン・ギャバンの魅力について話しはじめれば、終わりがなくなってしまうかも。

フランスでも、また日本でも、ジャン・ギャバンが突然に、注目されるようになったのは、『望郷』ではないでしょうか。
1937年に公開された名作。

原題は、『ペペ・ル・モコ』。

場所は、アルジェのカスバ。
ここにパリのギャング、ペペが逃げ込んできて。
そのペペを演じるのが、ギャバン。
まあ、その様子の佳いことと言ったら。

白い水玉のスカーフに、オフ・ホワイトのソフト帽。
美事に決まっております。
水玉のスカーフはギャバンの気にいるものがなくて、マダムのを拝借したという話があります。

時代ということもあり、また役者ということもあり、ギャバンは多くの帽子を被っています。
ジャン・ギャバンが若い頃から被ってきた帽子を時代順に並べるなら、ちょっとした「シャッポ・クロンクル」になるのではないでしょうか。
ジャン・ギャバンの記録で眺める限り、最初の「愛帽」は、ベレー。

白いベレー。

これはジャンのお姉さん、エレーヌからのお下がりだったそうですが。
ジャンが九つの時には、この白いベレーを被っています。

晩年のジャン・ギャバンはフランス郊外で、馬の世話をしながらの、悠々自適の生活を送っています。
その時代にギャバンがもっとも好きだったのが、キャスケット。
大胆なヘリンボーン柄のキャスケット。
杉綾はフランス風にいえば、「シェヴロン」でしょうね。

ところが。

ジャン・ギャバンは「シェヴロン」のポロ・コートを着ていて。
そのトゥイードとまったく同じ生地でキャスケットを仕立てているのです。
おしゃれですね。

コートとお揃いのキャスケットは、「ギャバン・キャスケット」と呼ぶことにいたしましょう。