ヴェイル&ヴェイルの物語 #071

機能と装飾。

これは一見、反対の関係でもあるように思えます。
機能は機能性であり、装飾は装飾性である、と。

でも、機能から装飾が生まれることもあります。

たとえば、紳士服の脇ポケット。
時に、斜めのフラップ・ポケットになっていたり。
正しくは、「ハッキング・ポケット」と言います。
その昔、ハッキング・ジャケットについていたので。

あのハッキング・ポケットは、乗馬の姿勢で、脇ポケットのものを出し入れするのに、都合がよかったからです。
が、それが今では古典的な細部デザインとなっているわけです。

日本の、女の衣裳で探すなら、「虫垂」 ( むしたれ ) があります。
「虫の垂絹」とも。
これは平安時代の、旅の衣裳だったのです。

大きな菅笠をかぶり、その周囲の薄絹を長く、下げた。
これを、「虫垂」と呼んだのです。
いわばヴェイルですが、膝丈ほどの長くものでした。

虫垂は、まず第一に、埃よけ。
第二に、他人の顔をのぞかれないために。

「虫よけ」というのは、大きな誤解であります。
虫垂の虫は、「苧麻」のむし。
つまり苧麻の意味だったのです。

平安期のヴェイルは、主に苧麻が用いられたから。
虫垂もまた最初は機能性が重じられたのでしょう。
が、時代とともにそれは、貴婦人の象徴にもなっていったのです。

まさに機能と装飾は、紙一重であります。

平安時代の虫垂を参考にして、「ヴェイル&ヴェイル」の帽子があってもよいのではないでしょう。

たとえば、オーガンディーのクラウンがあって、それと共布にの、長い、ヴェイル。

もうこうなれば、ほとんど衣裳にも近い、ヘッド・ドレスになってくるわけですが。