マッド・ハッターの伝説 #073

英語の辞書を開いてみると、「マッド・ハッター」 mad hatter という単語が出ています。

その言葉通りに解するなら、「頭のへんな帽子屋さん」ということになります。

アメリカやイギリスでは会話の中に、しばしば、使われたりするようです。
帽子屋としてはあまり嬉しくない表現でもあります。

では、どうしてこの「マッド・ハッター」がよく使われるのか。
これは明らかに、ルイス・キャロルのせいです。
1865年にルイス・キャロルが『不思議の国のアリス』を発表。
これが大人気となって。
英米人は子どもの頃から『不思議の国のアリス』を繰り返し読んでいます。

この『不思議の国のアリス』の中に、「マッド・ハッター」が登場するのは、言うまでもありません。

「マッド・ハッター」といえば、『不思議の国のアリス』。
『不思議の国のアリス』といえば、「マッド・ハッター」。
そんな具合なのです。
そこで、多くの人は、『不思議の国のアリス』こそ、「マッド・ハッター」の源だと考えているようです。

しかし、「マッド・ハッター」の言いまわしはルイス・キャロルの時代よりも、はるかに古いのです。

だいたい1600年頃の英国には、すでに「マッド・ハッター」が用いられていたらしい。
でも、その語源は、よく分かっていません。
というよりも「マッド・ハッター」の語源説は、少なくとも八種ほどあります。
これでは、語源が分かっていないのと同じではないでしょうか。

昔むかしの帽子製造業が、厳しい環境であったことは簡単に想像できます。
フェルトを作り、フェルトから帽子を作る段階で、多くの水や蒸気を使います。
とても心地よい環境だったとは言えないでしょう。

そこで帽子職人たちは、多くラムを飲みながら仕事をした。
今から三百年ほど前の話ではありますが。

この帽子職人がラムを飲みながら、酩酊しながら、作業しているのを見て、
「マッド・ハッター」の言葉が生まれたのだと、私は考えているのですが…………。