ネルソン・ハットの伝説 #074
昔むかしの話ではありますが。
1880年頃のこと。
今からざっと140年くらい前の時代。
場所は、英国のロンドンであります。
ロンドンのほぼ中心、セント・ジェイムズ・ストリート。
ある立派な紳士がここを歩いていて、一軒の帽子屋を見つけて、入る。
そして、言った。
「コックド・ハットを作ってもらいたい」
コックド・ハット cocked hat は、「大礼帽」のこと。
大礼服を着た時にかぶる帽子なので、大礼帽。
ナポレオン帽にも似ています。
つまりは「二角帽」であり、「ビコルヌ」でもあります。
このビコルヌに、絢爛たる金糸の刺繍を施した帽子が、コックド・ハットなのです。
とにかく紳士はセント・ジェイムズの帽子店で、大礼帽を注文。
そして出来上がってみると、たいへん具合がよろしい。
「うーん。これは気に入った!」
その紳士の片目は義眼だったので。
その義眼がさりげなく隠れるスタイルだったから。
紳士の名前は、ホレイショ・ネルソン。
あのネルソン提督だったのです。
そして作った帽子屋の名前が、「ロック」。
今もセント・ジェイムズにある老舗、ロック帽子店だったわけです。