ズズ・ベレーの伝説 #075

相撲番付というのがあります。

横綱があって、大関があって。
相撲が強い順に並んでいる一覧表。
あの相撲番付は少なくとも江戸時代にはあったのでしょう。
ずいぶんと古いものです。

「番付」と呼ぶかどうかはさておき、なにかの順番は、いつの時代にも、誰にとっても興味あるものでしょう。

宮本武蔵と佐々木小次郎、どっちが強かったのか。

これと同じように、「おしゃれ番付」を作るとすれば、いったいどんな風になるのでしょうか。

もし私が勝手に「おしゃれ番付」を作るとするなら。

その横綱は間違いなく、安井かずみであります。
不動の第一位。
二番三番はまったく浮かんできませんが、第一位は、誰がなんと言っても、安井かずみ。
時代を問わず、国を問わず、安井かずみ。

少なくとも1960年代に青春を過ごした人で、安井かずみに憧れを抱かなかった人は、少ないと思います。
安井かずみは何を、どう着ても、ごく自然に見えた。
これはとびきりのおしゃれであることを意味します。

そしてまた、安井かずみはなんといっても身体の内側までもおしゃれだった。
こんな人は、そうそういません。

♩格子戸をくぐりぬけ…………。

以前、小柳ルミ子が歌った『瀬戸の花嫁』。

あの『瀬戸の花嫁』の作詞家もまた、安井かずみ。
作曲は、平尾昌晃。

安井かずみは作詞家である前に、詩人でした。
それも詩を創る人であると同時に、存在自体が詩人でした。
何をやっても「絵になる」人でした。

もし平成という時代を定義するなら、もうひとりの安井かずみが生まれない時代。
そうも言えるでしょう。

安井かずみは、それくらい、際立ったおしゃれ屋さんだったのです。

いつか安井かずみがかぶっていた帽子に、ベレーがあります。

白い、丸い、ベレー。
深く、かぶって、クラウンが大きくふくらんでいました。
なんてことのないベレーなんですが、安井かずみがかぶるとなぜか、ズズ・ベレーになってしますのです。

「ズズ」は、安井かずみの愛称。

ごく親しい、同世代の人たちは、「ズズ」って呼んでいましたから。