かぶる伝説 #080

帽子がひとつ、ふたつ、みっつあったとして、どんな風に数えればいいのか。

いつもいつも、「ひとつ、ふたつ………」では芸がないような気もするし。

硬い帽子、たとえばシルク・ハットのように畳めない帽子は、「一個、二個………」と数える。
一方、キャスケットのように畳むこともできる帽子は、「一枚、二枚…………」。
どうもそんな感じがあるようです。

帽子はふつう、「被る」といいます。
あるいはまた「冠る」とも。
さらには、「載せる」の表現もあります。

昔は帽子をよくかぶる人のことを、「載帽派」と言った。
これで「たいぼうは」と訓んだのですが。

では、古代ではどうだったのか。

「冠る」の表現があったという。
これで、「かがふる」と訓んだ。
この「かがふる」が時代とともに、「こうぶる」に。
「こうぶる」からさらに、「こうむる」へと。
そして近代になって、「こうむる」から、「かぶる」になったとの説があります。

古井由吉が書いた小説に、『山躁賦』があって、この中にも「かぶる」が出てきます。と
いうよりも、『山躁賦』の第一行が。

「頭巾か帽子か、茶人のかぶる隠居のかぶる、宗匠のかぶる…………」

と、はじまるのです。

物語の語り手が新幹線の食堂車の中で、不思議な僧侶に出会う場面。
ここから小説が綴られて。
なんだか「かぶる」が多い書き出しではありますが。
たぶん、「宗匠帽」のことなのでしょう。

それはともかく、「かぶる」は今や広く普及しているようですね。