ボイナの伝説 #081

以前、梅棹忠夫という立派な学者がおりました。

社会人類学の教授。
京大の教授でもありました。

梅棹忠夫は、社会人類学の専門家でもあって、多くの国々を旅して廻っています。

その旅のひとつに、バスクがあります。
バスクといえば誰しも「ベレー」を想うでしょう。
梅棹忠夫もバスクの旅から帰って、『ベレー帽』と題する随筆を発表しています。

「ベレー帽は、バスク文化が全世界に対しておこなった貴重な貢献のひとつである。」

梅棹忠夫は『ベレー帽』をそんな風に書きはじめているのです。

結論を先に申しますと、梅棹忠夫はバスクで、ベレーをひとつお買い上げになっています。
では、どこで買ったのか。
バスク、ギプスコア州、トロサで買った。
トロサこそベレーの本場なんだそうです。

トロサのどこで買ったのか。

「服地屋」で。

帽子屋というのはなくて、服地屋にベレーを置いてあるんだそうです。
値段は当時の日本円に換算して、600円くらいだったという。

それは黒いベレーで、赤い裏地がついている。
裏地の中央に菱形のマークがあって。
「アントニオ・エロセギの孫」と、書いてある。
それよりも大きな文字で、 Tolosa と入っている。
もちろん土地の名前であります。
トロサのベレーであることは、きっと誇りなのでしょう。

ところでバスクではベレーとは呼ばない。

「ボイナ」 boina と言う。

大きな声で「ボイナ!」と叫びたくなるベレーをかぶってみたいものですね。