折紙帽子の物語 #081

小沼 丹という作家がありました。

短篇の名手。
随筆の名人。
その一方で、早稲田の英文学教授でもあったお方。

小沼 丹は、筆名。
本名は、小沼 救。
救と書いて、「はじめ」と読みます。

これで驚いてはいけないので、お父さんの名前が、邁。
邁と書いて、「すぐれ」と訓むのです。

お母さんの名前が、涙子。
涙子と書いて、「るいこ」と訓ませたんだそうです。

小沼 丹は名前が変わっているせいかどうか、変わった小説を多く書いています。
そうそう、言い忘れましたが、文士としては、井伏鱒二の弟子でもあります。

小沼 丹が昭和三十年に書いた短篇に、『帽子』があります。

『帽子』の題ですから帽子の話も出てきます。
が、珈琲の話も出てきます。

そうなんです、小沼 丹は珈琲が好きで、帽子が好きだった作家なのですね。

『帽子』の時代背景は、戦前。
戦前には本物の珈琲がなかなか手に入らなくて。
それを「僕」は友達と探しに探して。やっと奇妙な一軒の店を発見。

店に入ると。
「純毛珈琲」と書いてある。
「スフ珈琲」というのもあって。
スフ珈琲は、やや紛い物。
純毛珈琲は、本物珈琲。

で、「僕」は純毛珈琲を頼むという粗筋。

ところで「僕」友人から帽子をもらう。

それは不思議な帽子で、六分の一に畳める帽子。
六分の一ですから、畳むと、ポケットにも入れておける。

小沼 丹の『帽子』はあくまでも小説であり、創作なのですが。
実は「六分の一帽子」実現できそうなのです。

それが、「折紙帽子」。

フェルトを一枚の大きな折紙に見立てて、畳むと、帽子に。
開くと、薄い一枚のフェルト地に。

はやく「折紙帽子」に出会ってみたいものですが。