さんすう ぼうしの伝説 #086

「消去法」という言葉があります。

訓んで字のごとく、「消し去るための方法」。
ある理由ために、要らないと思われるものを、はじめから取り去っておくことです。

たとえばデザートに食べたものを考える時、メニューにあるものの中から選ぶ。
メニューに載っていないものは、取り去る。
これもみじかな「消去法」でしょう。

あるいはまた少し難しくなると、数学での「消去法」があります。
これは可能性のないものを、先に消しておくための学問。
ひとつの例として、「ガウスの消去法」というのがあるんだそうです。
私にはさっぱり分からない学問であります。

ところがここに、『赤いぼうし』と題された絵本があるのです。

野崎明弘の文、安野光雅の絵。
野崎明弘は、数学者、安野光雅は、絵師。
絶妙のコンビでしょう。

『赤いぼうし』は、幼稚園生にでも分かるように、「消去法」を説いた絵本なのです。

「もっとも難しいことを、もっとも易しく説明できる人こそ、明晰である。」

たしかそんな言葉があったと思います。
『赤いぼうし』は、まさにそのことがよく理解できる絵本です。

存在し得ないものを消去する。
野崎明弘は、優しく、語りかけるように説いてくれます。
そのための教材が、「赤いぼうし」と「白いぼうし」なのです。

登場人物は、三人。
太郎と、花子、そして、かげぼうし。

太郎、花子、かげぼうしがそれぞれに、赤いぼうし、白いぼうしをかぶる可能性。
そこから「消去法」を語るのです。

ところでこの赤いぼうし、白いぼうしはどんなかたちなのか。

ボウラー。
山高帽なのです。
安野光雅によって、美しく描かれています。

一度、少年の、少女の時代に還って、「赤いぼうし」、「白いぼうし」をかぶってみたいものではありませんか。