シャッポの伝説 #088

帽子のことを「ハット」と言います。
あるいはまた、「キャップ」とも。

ツバがまったくないか、前だけにある帽子を、「キャップ」。
一方、ブリムがしっかりついているものを、「ハット」。
これはまあ、常識でありましょう。

ハットもキャップももとは、英語。
フランス語では、「シャッポー」 chapeau 。

フランス語の「シャッポー」はわりあいと広い意味であるらしく、ほとんどの帽子を指して「シャッポー」と呼んでいるらしい。

たとえば、「シャッポー・クローシュ」は、釣鐘型の帽子。
つまり「クローシュ・ハット」のことです。

あるいはまた、「シャッポー・ド・ソレイユ」は、「サン・ハット」のこと、大きな日除け帽子のことになります。

さらには、「シャッポー・オート・デ・フォルメ」は、トップ・ハットの意味。
直訳すれば、「高い形の帽子」ということになります。
つまり「シャッポー」はとても便利な言葉とも言えるでしょう。

フランス語のシャッポーは、ラテン語の「カッペルース」 cappllus から出ているらしい。
それは「頭巾」の意味だったそうです。

さて、幕末から明治の時代になって、はじめて西洋から帽子か入ってくる。
この時の呼び名はすでに「シャッポ」だったのです。
たぶんフランス人の言葉を耳で聴いて、「シャッポ」の日本語が生まれたものと思われます。
シャッポは明治語、そう言っても間違いではありません。

ここから、「シャッポを脱ぐ」の慣用句も誕生したのでしょう。

ところが。
フランスにもまったく同じ慣用句があります。
「シャッポー・バ」といえば、「降参」の意味になるそうですね。
chapeau bas は「帽子を脱ぐ」。
つまりは「参った」の意味になるらしい。

明治はじめの日本人は、そのフランスでの言いまわしを知っていたのか。
それともまったく偶然のことなのか。

大きな謎であるのですが。