かおる帽の物語 #086

紫式部の実。紫式部は言うまでもなく、平安期の、女流作家のことです。
あまりにも有名な『源氏物語」の作者であります。

その紫式部とは別に、「紫式部」があります。

植物の。花の「紫式部」。
とはいっても実際にはその実を愛でるものなのですが。
それこそ紫色がかった青い、小さな実をつけるのです。

この花の「紫式部」が描かれる短編に、『母の帽子』があります。
太田治子作。
『母の帽子』には一句出てきます。

実むらさき 妻のようだと ひとりごと

これは夫である平太郎が、妻のかおるを読んだ句、という設定になっています。
どうして「実むらさき」なのか。

かおるは、紫式部の実の色の帽子が大好きだったから。
そしてまた、かおるは小説の中で、帽子デザイナーとことになっているのです。
つまりは自分のために、自分で作った帽子なのです。

『母の帽子』を読んで、思うのは、創作と現実との距離。と
いうのは太田治子は実際の自分の母についての随筆を書いています。

「ガルボ・ハットが好きだった」とか。

現実と創作とを混同してはいけないのでしょう。
が、私は太田治子の『ガルボ・ハット』を読んで、長い間その色を想像していたものです。

そんなとことに、『母の帽子』に出会って。
なるほど、「紫式部の実」の色である、かと。

それはともかく、「かおる帽」を作ってみようではありませんか。

紫式部の実の色の、ガルボ・ハットを。