サリンジャー・ハットの物語 #094

サリンジャーは、はしかに似ています。

ここでのサリンジャーが、J・D・サリンジャーであるのは、言うまでもないでしょう。
サリンジャーの本名は、ジェローム・デイヴィッド・サリンジャー。
でも、サリンジャー本人がこのフル・ネイムを嫌って、少なくとも自分では、「J・D・サリンジャー」で通したものです。

アメリカの、小説家。
J・D・サリンジャーの代表作は、『ライ麦畑でつかまえて』。
1951年の発表。原題は、『ザ・キャッチャー・イン・ザ・ライ』。

『ライ麦畑でつかまえて』の主人公は、ホールデン・コールフィールド。
十七歳の問題少年。
学校での素行が悪くて、学校を追い出された男の子。
たぶんに少年期のサリンジャーが投影されています。

男は誰でも若い時に、『ライ麦畑でつかまえて』を読むと、ホールデン・コールフィールドに共感してしまう。
でも、大人になるにつれてそんな気分は忘れてしまうのですが。
だからサリンジャーははしかに似ているのです。

J・D・サリンジャーは『ライ麦畑でつかまえて』で、一躍、人気作家に。
そしてその後は仙人の生活に入る。
すべての社交を絶って、誰にも会わない、世捨人の生活を。そ
のために自宅を高い塀で囲んだのは、有名な話でしょう。

J・D・サリンジャーの短篇に、『マディソン・アヴェニューのはずれでのささいな抵抗』があります。

1946年『ザ・ニュウヨーカー』12月21日号に発表された物語。
この書きはじめに。

「上の部分がV字に鋭くへこんでいる帽子をかぶって家に帰った。」

これはプレップ・スクールの生徒、ホールデン・コールフィールドの様子。
まあ、誰もが帽子をかぶっていた時代ですからね。
あるいは、センター・クリースのソフト帽かと思われます。

ここで少し話は飛ぶのですが。
J・D・サリンジャー自身は、194510月18日に、シルヴィアと結婚。
この頃のサリンジャーの写真を見ると。やはりダーク・スーツにグレイのソフトをかぶっています。

センター・クリース、フロント・ピンチのソフト・ハット。

それがどうも、おなじフェルトのハット・バンドのようにも思えるのです。
それが実際にどうであったかはさておき。

フェルトの、ソフト帽でやはりフェルトのハット・バンドを巻いた帽子。

「サリンジャー・ハット」、かぶってみたいものですね。