その昔、インドの首相であった人物に、ネールがいます。

 

ジャワハルラル・ネール。

 

ネール Nehruは、「ネルー」とも。
ネルーが正しいのか、ネールが正しいのか。
ここでは一応、「ネール」とするとしましょう。

 

ネールに因むファッションとして、「ネール・ジャケット」があるのは、言うまでもないでしょう。
ネール・ジャケットを上下で組み合わせた場合には、「ネール・スーツ」と呼ばれたものです。

1960年代末から、1970年代のはじめにかけて、大流行となりました。
たしかビートルズもステージ衣裳としてのネールジャケットを着ていたはず。
ちょうどインド音楽にも関心を示しはじめていた頃で、そのことへの関連があったのかも知れません。

 

ネール・ジャケットには、「ラジャー・コート」 rajah coat をはじめ、いくつかの名前でも呼ばれたものです。

 

ラジャーは「インドの王様」の意味。
インドでの民族衣裳に、立襟で、細身の、丈の長い上着があったのは、間違いありません。

 

ただ、ネール自身はインド上流階級の出世で、1905年には英国のケンブリッジ大学に留学。
インドに帰国するのは、1912年のこと。
つまり若い頃から、国際的な教養をしっかり身につけた人物だったのです。
その上で、あえてインド風俗を尊重したのは、愛国心からだったでしょう。

 

ネール・ジャケットの上に愛用したのが、「ネール・キャップ」。
これもインド伝来の衣裳のひとつだったと思われます。

 

ネール・キャップはごくシンプルな、二つ折にした布の帽子。
生地はおそらくインド・シルクでしょう。
シンプルな構造ですから脱いだ時には平たく畳んでもおける。
邪魔にならない。軽くて、嵩張らない。
しかも被ることによってユニークで、立体的な帽子になる。

 

平和主義者、ネールに賛同するにもふさわしい帽子でしょう。