ソディアック・ハットの物語 #053

むかし、フランスの文豪に、バルザックという人物がいました。

バルザックはたいへん多作な方で、長篇をいくつも仕上げています。
『人間喜劇』だとか『谷間の百合』だとか、『ゴリオ爺さん』だとか。

バルザックは小説を書くために、珈琲を飲んだ。
自分で好みの珈琲豆を買いに行き、自分で珈琲を淹れて、何杯も何杯も、珈琲を飲んだ。
バルザックの活力源は、珈琲だったようです。

バルザックは、「オノレ・ド・バルザック」を名乗った。
フランスでの「ド」はふつう、「貴族の家柄でありまして………」という意味になります。
では、バルザックは貴族だったのか。これにも実はいろんな事情があるのだが。
結論だけを申しますと、バルザックはほんとうの貴族ではなかった。
自称の「ド」だったことになります。

バルザックより50年ほど後の作家に、モオパッサンがいます。
モオパッサンの実際の活躍期間はたった十年ほどなのですが、その間に多くの傑作を遺しています。
『ベラミ』だとか、『女の一生』だとか、『脂肪の塊』だとか。
長篇の他、優れた短篇をも多く書いています。

このモオパッサンもまた、「ギイ・ド・モオパッサン」を名乗った人。
ただ、ギイ・ド・モオパッサンは、ほんとう。
ちゃんと貴族血が流れていたのです。
少なくとも「ド」をつけることができた人物だったのです。

だから、というわけではありませんが。
モオパッサンの被る帽子は特別だった。
帽子の裏に、モオパッサン家の紋章がさりげなく刻印されていたのです。
たとえば、カフェに入って、帽子を脱いで、脇に置く。
と、その貴族の紋章がちらり見えたわけです。

私たちにはふつう紋章はありません。
でも、誰にも誕生日はあります。

そこで、「ゾディアック・ハット」。

星座の紋章入り帽子。
自分の生まれた星座のマークが帽子の裏に、まるで紋章であるかのように、刻印されている帽子。

「ゾディアック・ハット」ぜひ被ってみたいものです。