ジョッキーキャップの伝説 #097

おしゃれに関係することに、「固有名詞」があります。

つまり「固有名詞」を出すのか、出さないのか。

たとえば。
「わたし、きのうシャンパン飲んだのよ」というのと。
「わたし、きのうドンペリ飲んだのよ」いうのとは、違ってきます。

似ているようで、実は大きく異なります。

「ドンペリ」は、もちろん「ドン ペニリヨン」のことで、高級シャンパンの代表例であります。
そもそもシャンパン製法をはじめたのが、僧侶のドン・ペニリヨンだったところから、その名前があるわけですね。

シャンパンは、フランスのシャンパーニュ地方で造られる発泡製の白ワイン。
シャンパーニュ地方でないものは、「ヴァン・ムスー」。
直訳するなら、「泡ワイン」ということになります。
ヴァン・ムスーの上が、シャンパーニュで、シャンパーニュの上がドン・ペニリヨンに代表される「ヴィンテージ・シャンパン」があるわけです。
が、その間にも無数のシャンパーニュのランクがあること、申すまでもありません。

ちょっと話は飛ぶのですが。
スコット・フィッツジェラルドの『夜はやさし』を読んでいると。
「ヴーヴ・クリコを飲んで……………」。
と、出てきます。

『夜はやさし』は1930年の刊行で、時代背景は1920年代になっています。
スコット・フィッツジェラルドは「固有名詞」のお好きな作家だったとも、言えるでしょう。
『夜はやさし』の中に。

「エルメスで鮮やかな青と燃えるような赤のシャミアレザーのジャケットを買った……………」。

そんな風に出てきます。エルメスもまた「固有名詞」に他なりません。
フィッツジェラルドは「有名店で」では足りないと思ったのかも知れませんが。

『夜はやさし』の冒頭、夏の高級リゾート地での様子。
「ジョッキー・キャップ」が何度も出てきます。
男は水着の上にジョッキー・キャップをかぶっているのです。
1920年代にはそんな習慣だったのでしょう。

ジョッキー・キャップはもともと、騎手の帽子、ツバが狭く、頭にフィットした帽子。

もう一度、ジョッキー・キャップを流行らせたいものではありませんか。