ヨット・キャップの伝説 #100

「ヨット・キャップ」という言い方があります。

ヨットに乗るのにふさわしい帽子なのでしょう。
「ヨッティング・キャップ」とも。
また、広く「マリン・キャップ」の名前で呼ばれることもあります。

たいていは、ネイヴィー・ブルーの、メルトン地などで作られることが多いようです。
やや学生帽にも似ています。
前に、幅の狭いツバがついているところなども。

ヨット・キャップのツバは、ふつう「ヴァイザー」とか「ピーク」の名前で呼ばれるようです。
このヨット・キャップのヴァイザーは、メルトンの共地、またはエナメル・レザーのものが付けられます。

船員がかぶる本式のヨット・キャップには、階級を示すための、記章やブレイドがあしらわれたりもします。

その昔、「船舶王」と謳われた、かのオナシスがごくふつうのヨット・キャップを愛用したのは、有名な話でしょう。

ヨット・キャップが出てくる小説に、『スコットランドの早春』があります。
スコットランドの地に住む、ロザムンド・ピルチャーが、1972年に発表した物語。
この中に。

「おまけに室内なのにどうしてか形のくずれたヨット用の帽子をかぶっていた。」

これは弟の、ジョディーの様子。

このヨット・キャップは、ジョディーのお父さんの帽子だったもの。
お父さんはすでに世を去っているので、いわば遺品としてのヨット・キャップなのです。

ジョディーはお父さんを偲ぶために、ヨット・キャップをかぶっているのです。
お父さんが愛用したヨット・キャップを。

帽子には、時に、そんな深い意味が籠められることもあるのでしょう。