マジック・ベレの物語 #103

たい焼きにはあんこが入っています。

これは当たり前の話で、中にあんが入っていないことには、「たい焼き」とは言えません。

そのたい焼きのあんにもいろいろとあって、時にはクリームになっていたり。
しかし本格のたい焼きはやはり小豆のあんでしょう。

小豆のあんに二種あって、粒あんと漉しあん。
これはまあ、好みの問題でありましょう。

好みの問題ではないのが、あんの位置。
あんが「たい焼き」のどこまで入っているのか。
しっぽまであんが入っているのがよろしいんだとか。

むかし、四谷にたい焼き屋があって、ここのたい焼きにはしっぽまであんが入っていた。

このたい焼きを食べて感動したのが、安藤鶴夫。
以前の、演劇評論家であります。

安藤鶴夫が、「あんがしっぽまで入っているたい焼き」と書いたので、今やほとんどのたい焼きに、しっぽまであんが入るようになった。
私は勝手にそんな風にに考えているのですが。

安藤鶴夫の代表作に、『巷談 本牧亭』があります。
昭和三十八年に出ています。
この中に、「マジック・ベレ」が紹介されていて。

「マジック・ベレというやつ、五厘刈りの、くりくり坊主にとっては、すっぽり耳まではいって、あッたかくって、離せないという妙なしろものなのである。」

そんな風に書いています。

この「マジック・ベレ」、桂 三木助に進められて、銀座の「トラヤ帽子店」で買ったとも書いています。

まったくの想像なのですが。

あるいはストレッチ性のあるベレではなかったかと。

安藤鶴夫は大学で、フランス文学を学んだあと、髪をばっさり切って、坊主頭。
晩年まで坊主頭を通した人物。
その坊主頭にも具合が良かったのでしょう。

それはともかく、もう一度、ストレッチ性のある、「マジック・ベレ」を作ってみようではありませんか。