スラウチ・ハットの物語 #113

きょうは少し、「スラウチ・ハット」のことを、お話いたしましょう。

slouch hat と書いて、「スラウチ・ハット」と訓みます。

「スラウチ」は、もともと「前のめり」とか「前かがみ」の意味があったそうです。
この「前のめり」と「帽子」とがひとつになって、「スラウチ・ハット」の言葉が生まれたものと思われます。
つまり、そもそもはツバの前が深く垂れた帽子のことであったようです。

1837年にトーマス・カーライルが書いた本の中に、すでに「スラウチ・ハット」の言葉が出ているらしい。
「スラウチ・ハット、もしくはスラウチド・ハット………………。」と。
つまり1830年代には「スラウチド・ハット」の言い方もあったようですね。

スラウチ・ハットはたいへん古い帽子でもあって、今のソフト・ハットの曾祖父さんみたいな存在なのです。
ワイド・ブリム、オープン・クラウンの、ソフト・ハット。
「帽子の原型」と言って、それほど大きな間違いではないでしょう。

ブリムがあまりに広いので、顔の前に垂れてくる。
垂れてくると歩きにくいので、前が見えるように、ツバを上に折る。

こうして生まれたのが、トリコルヌ。
「三角帽」であります。

このトリコルヌをもっと平たく畳んだのが、ビコルヌ。
「二角帽」。
かのナポレオン・ボナパルトが愛用してのも、「ビコルヌ」なのです。

結局のところ「角」がふたつなのか、みっつなのかによって、呼び名が変わってくるわけです。

トリコルヌもビコルヌも今では、古典帽とされます。
でも、「スラウチ・ハット」はそれよりも古い帽子なのです。
「古典古典帽」でしょうか。

今日、もう一度、スラウチ・ハットが復活したらなあ、とも思ったりするのですが。