帽ふれ伝説 #117

♫ 逢うは別れの はじめとは……………………。

たしか、そんな歌があったように思うのですが。

なるほど、人生に「別れ」はつきものであります。
逢うことあるのは、別れることもあるわけで。
別れのない人生はありません。

別れで辛いものに、船があります。
昔むかし、知り合いが船で旅たつ時には、波止場まで見送りに行ったもの。
五色のテープ飛びかって。
「必ず、帰ってこいよ!」。「元気でな!」。「手紙書けよ!」。

はじめのうちはいいのですが。
船が遠くなるまでの時間は長くて。
本当に別れは「辛い」と、あらためて実感したものであります。

その点、新幹線は、あっという間に姿が消えてしまいます。
昔の船出と新幹線の見送りには、大いなる違いがあるでしょう。
いや、今は「見送り」ということ自体が少なくなっているのではないでしょうか。

別れ、見送りに欠かせないのが、ハンカチーフ。

ことに戦前の女の人は例外なく、ハンカチーフを振って別れを惜しんだものです。
今でも新派の劇にはたいてい、別れの場面ではハンカチーフが出てきます。
以前、「ハンカチーフは人に贈るものではない」との迷信も、ここから出たもの。

ハンカチーフを贈ると、「別れ」につながるから、と。

海上自衛隊での言葉に、「帽ふれ!」があります。
特別な別れの儀式には、「帽ふれ!」 の号令がかかります。
船の甲板に整列して、制帽を右手で脱ぎ、それを高く、振る。

それが、「帽ふれ!」なのです。

自衛隊関係者にとっては、厳粛な、また感動の一瞬であるという。

帽子は、どんな帽子をかぶろうかな。
ただ、それだけのものではありません。

人間の「象徴」でもあるのです。

帽子を、どんな風に扱うのか。
時と場合によっては帽子は、感動と厳粛の源ともなるのです。