ルブゥの伝説 #125

ちょっとむかしの、巴里の話をさせていただきます。
むかしとは、1960年代のことです。

1960年代までの巴里には、「ペラン」という手袋屋がありました。
巴里の、フォーブル・サントノーレに。
当時、巴里で手袋といえば、なにをさておいても、「ペラン」だったそうです。
ペランは、巴里第一の手袋屋。

ペランには、ありとあらゆる、洗練された手袋が並んでいました。
もちろんけっして、お安くはありませんでしたが。
店の真ん中に、手袋台があって。
ここに腕を乗せて、自分にぴったりの手袋を探すわけです。
なんとも長閑な、優雅な匂いがしたものです。

たぶん手袋の「ペラン」と同じような存在だったのでしょう。
戦前の巴里には、「ルブゥ」という店があったらしい。
帽子屋。

サマセット・モオムの『剃刀の刃』を読んでいると、「ルブゥ」が出てきます。

「わし自身でシャネルに話しておいたよ。そして、お前のために、あした三時を約束して置いたんだ。それから、帽子だ。そりゃあ、いうまでもなくルブゥだろうさ。」

アメリカの富豪が巴里で、姪の服を用意する場面。
私は知りませんが、「ルブゥ」という一流帽子店があったものと思われます。

小説の中でも、「そりゃあ、いうまでもなく◯◯ だろうさ。」と、いわれるようになってみたいものでありますが。