フートルの伝説 #139

フートルは、フランス語のフェルトです。

feutre と書いて、「フートル」と訓みます。
これは古いドイツ語から、フランスに入った言葉のようです。

フートルは、昔、よく「カストール」で作ったものです。
カストールは、英語でいうところの、ビーヴァーのことですね。

このカストールに次いで上等のフェルトが、リエーヴル。
リエーヴルは、「野うさぎ」のこと。
これは「ラパン」より上質だとされます。
フートルにもいろんな種類があるということです。

実際、繊維さえあれば、フートルに仕上げることは可能なのです。
が、やはり長い歴史の中で、カストールがよろしいということになっているのでしょう。
つまり、帽子に仕上げた場合、柔らかく、しなやかで、光沢もあり、かぶりやすいのです。

布地には、たて糸とよこ糸があります。
編み地もそうで、一本の糸で編まれます。

しかしフートルは、たて糸もよこ糸もない。
つまりたてもよこもないのであります。

繊維のミックスのミックス。

だから、端を切っても切っても絶対にほつれることがありません。
こんな特殊な素材は他にはありません。
フートルだけの特技なのです。

西洋の時代小説を読んでいますと、大きな帽子に剣が刺さる場面があります。
刺された帽子を手で揉んで直すところが出てきたり。
これはほんとうのことなのです。

フートルは、繊維と繊維とが複雑微妙に絡みあっているので、それを修復すれば、「傷」も治ってくれるのです。

フートルが一生物、いや、永遠に滅びることのない貴重な素材なのです。