カプリーヌの物語 #136

「カプリーヌ」と呼ばれる、貴婦人のための帽子があります。

もともとはフランス語で、カプリーヌ capeline と呼ばれたものです。
ブリムの広い、装飾的なハットのことであります。

英語でも同じように、capeline と書きますが、なんとなく「キャプリーン」に近い発音になります。
ただし、スタイルは同じ帽子のことなのです。

このカプリーヌが出てくる小説があります。
吉村 昭が昭和四十九年に発表した短篇。
題名も、『帽子』。

「キャップリンでございます。おとりしましょうか」
娘の言葉にかれはうなずいた。

これは、「かれ」 が、帽子屋で奥さんの帽子を選んでいる場面。
奥さんは事情があって、店には来られないので。
「かれ」は奥さんの帽子を買うごとに、その名前を紙に書いて、帽子箱に入れておく習慣があるので、名前を訊いたのです。

文中の「キャップリン」はたぶん、カプリーヌのことなんでしょう。

カプリーヌはそもそも、中世、フランスの兜だったもの。
つまり、頭からすっぽりとかぶる、ブリムの狭い、ヘルメットだったのです。

それが時代とともに変化して、エレガントな、鍔広の、婦人帽を指すようになったものです。