物語帽の伝説 #145

むかし、帽子がお好きだったお方に、小沼 丹 がいます。
英語の教授にして、名随筆家だった人物。
それで、何度も何度も、帽子の随筆をお書きになっています。

たとえば1978年にも、『帽子の話』を書いているのですが。

「スウエイドの奴で、恰好はチロリアン・ハットに似てゐる。」

そうそう、小沼 丹は最後まで、正字、旧仮名で通した作家でもありました。

小沼 丹はこの「スウエイド」の帽子を、新宿のバアに忘れてくる。
で、致しかたなく、新しい帽子を買い求める。

もうそんなこと、すっかり忘れたくらいの時期に、また新宿のバアへ。
と、忘れたはずの帽子をちゃんと取っておいてくれた。

バアから家までのタクシーの中で、二つの帽子を重ねてかぶって、という内容の随筆になっています。

だから、『帽子の話』。

さて、ここで思うことがひとつあります。

帽子は必ず、忘れた場合でも、「取っておいて貰える帽子」を、買いましょう。