ポケットハットの伝説 #146

帽子は時に、ポケットの代りにもなる、そんな話をしてみましょう。

いや、それほど改まらなくても、私たちはふだんの暮しの中で、無意識のうちに帽子をポケット代りにしているものなのです。

列車の切符を、ハット・バンドに挟んでおくとか。
甘栗をいっぱいもらった時、とりあえず帽子の内側に入れておくとか。

英國の文豪、ディケンズの長篇に、『荒涼館』があります。
1853年の発表。
もっとも1843年から書きはじめられて、1853年に完結した物語なのですが。
私たちにとっては、ヴィクトリア時代の風俗を識る上で、貴重な資料でもあります。

「御者の帽子には私たち全部の名前が書いてありました。帽子のリボンに三通の短い手紙がさしはさんであったのです。」

ヴィクトリア時代の郵便事情は今ほど整ってなくて、御者を手紙の使いに出すこともあったのでしょう。
では、御者はその手紙をどうしたのか。
やはりハット・バンドに挿しておいたのですね。

それならば、あらかじめクラウンの外側にポケットを用意した帽子があってもいいでしょう。