柔帽子の伝説 #155

柔帽子と書いて、「やわらかぼうし」と訓みます。

どうも明治には、「柔帽子」の言い方があったようですね。

私たちは時に、「ハード・ハット」と「ソフト・ハット」に区別することがあります。
たとえば、シルク・ハットやボウラー・ハットは、「ハード・ハット」。
一方、ソフト・フエルト・ハットは、「ソフト・ハット」の代表選手であります。

まさに「堅い帽子」と「柔わらかい帽子」というわけです。

「この宿屋には必ず堅帽子と柔帽子の人あらん、彼はその実堅帽子となりて来たれり、柔帽子となりて給使を呼びしからは…………………。」

黒岩涙香が、明治二十六年に発表した『帽子の痕』に、そのように出ています。

つまり、宿の男は、客を覚えるのに、「堅帽子」と「柔帽子」とで区別することがあったと、書いているわけです。

まあ、便利といえば、便利でもあったでしょう。

しかし考えてみれば、明治二十五年頃には、紳士は「必ず」なんらかの帽子をかぶったことも、推測できるのであります。