帽子自慢の伝説 #156

帽子は頭の上の戴く装いであります。

あらゆるトータル・ファッションの中で、帽子の「上」にくるものは他にはありません。

頭の上ということは、顔の上でもあって、たいへんに目立つところの衣裳です。

自分でも気に入っている帽子をかぶっている時には、ちょっと得意な気分にもなるでしょう。
また、帽子は会話のネタにも最適でありましょう。

時には、自分の帽子を自慢したくなることも。
でも、あまり自慢しすぎてはいけないという教訓があります。

国木田独歩が、明治三十九年に発表した『帽子』。
この中に、帽子の自慢が出てくるのです。

「中折帽子、其帽子は新調の品、乘合の一人が眞面目か愛嬌か一寸賞めたら………………」。

ここでの「乘合」は、当時の乗合馬車のこと。
その、客同士の会話。

「中折帽子」の持主は。四十くらいの男。

相客に褒められたものだから、ここから滔々と帽子自慢が。

ところが、自慢の途中、風で帽子が飛ばされて………。
という内容になっています。

過ぎたるは及ばざるが如し。

帽子自慢は、さりげなくいたしましょう。