帰り道もセットのうち!?サウナの達人に聞く「ととのい術」【サ談会 vol.1】|OVERRIDE
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帰り道もセットのうち!?サウナの達人に聞く「ととのい術」【サ談会 vol.01】

帰り道もセットのうち!?サウナの達人に聞く「ととのい術」【サ談会 vol.01】

帽子専門店オーバーライドでは、先日発売されたブランド初のサウナハットが即完売。さらに、次の入荷待ちや予約の申し込みが後を絶たない。その人気からもわかるように世間は今、空前のサウナブーム!

そこで今回は、サウナ愛好家の間で知らない人はいないと言っても過言ではないサウナ芸人・マグ万平さんをゲストに迎え、サウナの魅力を根掘り葉掘り。最近目覚めたばかりだというサウナビギナースタッフ(舞浜店 楠元)が、体当たりでいろんなお話を聞いてきました。

芸人として活躍しながら年間約250回サウナに入り、数多のサウナ番組に出演するマグ万平さん。「サウナに入るのは歯磨きをするようなもの」という格言まで飛び出した今回の対談を通して、あなたの知らないサウナの世界を覗いてみては? 気づけば、沼にはまってしまうかも…

今回訪れたのは…

【金春湯|こんぱるゆ】
昭和25年に創業した東京都品川区大崎にある銭湯。昔ながらの良いところは残しつつ、新しいものを取り入れながら、日本文化である銭湯の魅力を提供している。

◆サウナにハマったきっかけ

楠元:はじめまして。よろしくお願いします!

万平:よろしくお願いします! (ラムネで)乾杯〜!

楠元:2ヶ月前くらいにサウナに目覚めたばかりの初心者なので、今回はいろいろ聞いていきたいのですが、万平さんはいつからサウナにハマったんですか?

万平:僕、元々出身が九州の福岡なんですが、九州には温泉が有名な地域がたくさんあるんですよね。小さい頃から、よく親父とも銭湯に行ってた。で、そこには、騒いでると「うっせーよ」って叱るこわいおじさんがいたり、マナーを教えてくれるおじさんがいたり。子供ながらに小さい社会に入り込んだ気分になれて、すごく楽しかったんですよね。だから、自然の中にある地元の露天風呂でバーっと開放感を味わうのはもちろん、近所の銭湯に行くのも大好きだった。風呂が好きでしたね。芸人として東京に出てきてからも銭湯にはよく行ってたなぁ。でも、サウナの良さは、全然わかんなかったんですよ。

楠元:そうなんですか!? 何かきっかけがあったんですか?

万平:お笑いライブの帰りによく銭湯に寄ってたんですよね。同期の芸人たちは、打ち上げでライブ終わり飲みに行くんだけど、僕はお酒がまったく飲めないタイプだから、ストレス発散が飲みじゃなく、銭湯だった。で、出来がよくなかったある日、いつもみたいに銭湯に行って、たまたまサウナ・水風呂・休憩っていうのを繰り返してたら「ちょっとこれ気持ちいんじゃないの?」って。

普段なら、ライブの後って、無意識に神経も使ってるし、スベったりなんかしたら、もう心労がえげつないんですよ。「帰ってゆっくりしよ…」って思って家に着いても、携帯の文字も入ってこないし、テレビつけても何観てるかわかんない。ずっとお笑いのこと考えちゃう。でも、その日は初めて、すごい心地いい気分になって。さっきまでめちゃめちゃスベったネタやってたのに「なんか、まぁいっか」って思っちゃったんですよ。あ、もちろん頑張らないといけないんですけど(笑)。「次あのボケを変えてもう一回挑戦してみたらいっか」なんて。ポジティブに捉えることができた自分に気づいて。これは、風呂に入っただけではなかった感覚かもなって。

楠元:なるほど…。

万平:後々調べていくうちに分かったのが、温めて冷やして… っていう“温冷交代浴”の中で、自律神経の乱れた部分が整っていったおかげで、心も解されていってたんですよね。サウナーたちはそれを「ととのう」って言うんですけど、そういう気持ちいい状態になると、五感も研ぎ澄まされる。確かに僕もその日、サウナから水風呂に入っていて上がった瞬間、普段は聞こえないであろう反対側の女性浴室のカランの音とか、おばちゃんの声がはっきり聞こえたんですよ。普通近い音しか聞こえないじゃないですか。で、あれ?と思って。そのまま… 視界が曲がって… グニャンって、水風呂から出て、こけて…「これか!」って。今思えば、それではないんですけど。

楠元:それは… 追い込みすぎたんですね(笑)

◆サウナも水風呂も嫌いだった… はずなのに

万平:そう。グニャンとなるまで水風呂に入るのは、決してマネしないでいただきたい。でもその日を境に気づいた。サウナ超面白いじゃんって。その日はもう家に帰るまでニコニコで夜風も気持ち良く感じて。それまでは、どっちかと言うとお風呂は好きで、サウナは嫌いだった。サウナと水風呂をつぶしてお風呂増やしてほしいと思ってたくらいだったので。特に水風呂なんて、あんな、クソ冷たいとこって(笑)。

楠元:そうなんですね! 実は僕もそれ、めちゃくちゃ共感できます。でも、水風呂とセットにすることでサウナのよさを初めて知ったというか。元々、炭酸泉につかるのが好きで温泉施設にはよく行ってて。で、行ったら一通り入りたくなって、サウナも入ってはいたんです。ただ水風呂は、足だけ入れて「やっぱ無理だー」って。冷たいし、なんで入るのかがわからなかった。でもある日、いつもの温泉施設にある野球選手がいたんですよ。その方がずっとサウナと水風呂を交互に入ってて。

万平:ほお。

楠元:で、いいのかな〜?って興味を持って。いつも躊躇してたけど、思い切り入ってみたら、心臓バクバクで。でもしばらく経ったら「あれ?」って。これってもしかして「ととのってる」ってやつなのかな?と。あと、サウナで頑張ってから水風呂に行くことで得られる達成感が、自分的にかなり良くて、そこからハマりました。水風呂のためにサウナ入ってるって言う友達見て「?」と思ってたんですけど、納得しましたね。

◆サウナで「ととのう」。マニアは行き帰りの道のりも使って「ととのう」

万平:うん、わかるな〜。大体、夏の1セット目は水風呂から始めません?

楠元:えっ、そこまでにはまだ到達してないです。勇気が…

万平:すごく気持ちいいですよ。外めっちゃ暑いじゃないですか。外歩いてる時点でサウナ室みたいな状態なんで。だから、サウナ室入る前に水風呂からスタートする。そこでもう十分ととのうのよ。出る時も水風呂でキンキンにしてから出たら、30度の直射日光で体温が戻ってきて、それが気持ちいい。冷えた体が温まって、血管が開いていく感じ。

逆に冬だと、サウナに入って体温をガンガンあっためてから、毛穴をギュッと閉じる程度に水風呂に入る。で、ポカポカの状態で出て、ひんやりした帰り道で外気浴。家までの帰り道でととのって、ゴール。

楠元:なるほど。ちょっとやってみます。サウナと水風呂、どれくらい入るとかありますか?いつも出るタイミングを迷うので。

万平:出たいなと思ったら出てる感じでOK。よくサウナも水風呂も何分入ったらいいですか? とか言われるんですけど、サウナ室の仕様だったりとか、座る位置だったりでも条件が全然違ってくる。水風呂の温度もお店によって全然違うんですよ。一概に何分とかはあまり言えないし、自分次第で大丈夫。サウナで有名なフィンランドとかは、時計がそもそもない。暑くなったら、寒くなったら、出りゃいいじゃんって感じで。温度計も、クール・ウォーム・ホットのざっくり三分割しかないんですよ。数字の温度計も一応置いてはいますけど。基本的にあんまり見てはいないです。

◆サウナの楽しみ方

※写真のサウナハットは旧モデルです。
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楠元:そうなんですね。無理しないよう気をつけつつ、自分の気持ちいい塩梅を見つけます! 最近は、朝テニスをして、そのまま温泉施設に行って、お昼ご飯を食べに行くっていうワンセットが、僕の中で贅沢な時間なんですが、ベテランの万平さんはどんな感じで普段サウナを楽しんでるんですか?

万平:朝テニス!? かっこいい。

楠元:いえいえ(笑)。でも次の日の疲れが全然違って。テニスだけしていたときは、翌日体がきつかったんですけど、サウナをセットにしてから、体が軽くなったんです。

万平:そうなんだ。やっぱりサウナとスポーツは相性がいいんですね。

楠元:そう思います。あと、その後に食べるお昼ご飯、すっごい美味しいんです。さっきまさに万平さんが言ってた、五感が研ぎ澄まされてるって感じで。

万平:いいね。僕のサウナの楽しみ方は… 入りすぎてるからなぁ(笑)。毎日入ってるから。そうですね… もう、お風呂とか歯磨きと一緒なんですよね。「歯磨きってどんな感じで楽しまれてますか?」って聞かれると困りません?

楠元:(笑)。確かに。

◆サウナは歯磨きと一緒

万平:それと一緒で「サウナ行くぞー」って感じで行っているわけではなく。日常になっちゃってます。とは言っても、入らないと気持ち悪い。歯磨きしないと気持ち悪いじゃないですか。で、歯磨きするとすっきりした気持ちで、次に向かえる。仕事の空き時間で、次の仕事までちょっと余裕あるなって思ったら、そこでサウナ行っちゃいます。入りながら、次の仕事の話を考えたり、自分の気持ちをまとめたりとか。喫茶店にちょっと寄る、みたいな感じの、日常ですよ。みんなが朝起きてコーヒー飲むように、朝起きたらサウナに入るし。寝る前はサウナで1日の出来事を思い出す。明日何をしようって考えるときにも、サウナに入る。

楠元:本当に、生活の一部って感じですね。もう、頭の中にはサウナマップがあるわけですね。

万平:はい、はい。ありますね。今、どこ住んでますか?

楠元:○○あたりです。

万平:いいな〜!もう今2店舗頭に浮かんでます。先月も行きましたよ。

楠元:僕、温泉施設の方しか行ったことなくって。サウナ専門のお店があるじゃないですか。まだ初心者なので勇気が出なくて。入っていいのかなって、若干ドキドキするというか。

万平:全然いい。全然大丈夫! 勇気なんていらないよ!「お前、勇気あんのか? ないなら帰れ!」とか言うやつは、誰もいないから(笑)。みんなボケーっと、自分のことしか考えてないよ。

楠元:(笑)。そうですよね。ありがとうございます。そういう場所ってサウナ室しかないんですか?

◆ここには、サウナマニアがいるな

万平:一応あったかい浴槽もあります。でも基本的にはサウナと水風呂が大きく作ってあって、サウナに特化した施設って感じかな。チラーっていう水をわざわざ冷やす機械があるんですけど、その機械を導入してるところだと、普通18度〜22度の水道水がキンキンに冷えて水風呂が15度以下になる。本来は、工場とかで熱い油なんかを冷やすための、めちゃ高価な工業用機械ですよ。それを水で使っちゃったっていう(笑)。因みにここ金春湯さんも、チラーありますよ。

楠元:すごい! じゃあ、あるところは結構限られてるんですか?

万平:そう。だから、チラーが入ってると、このサウナ屋、かなりのサウナ好きがいるなって。

◆サウナハットってどう使うの?

楠元:勉強になります。ところで、万平さんはサウナハットは使いますか?

万平:もちろん。使うときもあります。

楠元:どんなときに使います?

※写真のサウナハットは旧モデルです。
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万平:頭部を守るものなんで、熱いサウナのときに被ってますね。体が温まる前に耳が熱で痛くなってしまわないようにします。サウナ施設によっては、アウフグースというのを取り入れているところもあって。何かと言うと、熱したアロマストーンにアロマ水をかけて蒸気を出しながら、熱波師さんがタオルを振って熱風を届けるっていう、ドイツのサウナプログラムなんですけど、日本でもだいぶ浸透してきていて。それを受けると結構熱い蒸気と風がくるんで、耳や頭がワーッと暑くなる。そういうときにこのサウナハットをかぶったらすごくいいですよ。

※写真のサウナハットは旧モデルです。
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楠元:オーバーライドのサウナハットはどうでしたか?

万平:被りましたよ。本当によかった! なんだったら僕、オーバーライドさんからサウナハット作りましたって連絡がきたとき「遅いよ!」って言いましたから(笑)。帽子屋さんがサウナハットを作って欲しいってずっと思ってたんですよ。いつだ、いつだと待ちわびて。ようやくついに…!軽かったし、断熱性にも優れてて、すごくいい。サウナハットって羊毛フェルトの生地が多いんですよ。フェルトはずっと使っていると毛羽立ってきたり縮んだりして、洗うときもケアが大変なんですけど、これは洗濯機にも入れられるし、ズボラな僕もすごい助かります。素材が新しくて、デザインもかっこいい。

◆ルールなんてない。サウナは思いやりをもって自由に楽しむ

楠元:ありがとうございます。撥水もしてくれてるし、洗えるから、汗の匂いも気にならないですよね。僕も早くこれを被って、近所のサウナ専門店デビューしたいです。行くときのルールみたいなのってありますか?

万平:ないですないです。本当、さっきも言いましたけど、まじでルールはない。敢えて言うなら、水風呂入るときには汗を流して入りましょうとか、人がいたら大きい声で話さないようにしようねとか。ルールというか気遣いとか、思いやりみたいな。それがあれば十分じゃないですか。入り方なんて自由でいいと思うんですよ。

◆サウナ好きが陣取るベストポジションとは

楠元:ありがとうございます。いろんなサウナ室があると思うんですけど、ベストポジションってあったりしますか?

万平:どこだろうな。ストーブ前はあったかいですよね。単純に熱は上に行くので、二段三段と上がれば上がるほど温度は上がります。ベンチ一段で大体10度くらい違うんですよ。だからあぐらかくとかして、足先まで温まるようにするといいかも。あったまってないと、水風呂入ってても頭は熱いのに、足だけすぐ冷たくなるでしょ?

楠元:はい、なるほど。体勢もポイントなんですね。

万平:もし、誰もいなかったら寝っ転がるのも気持ちいい。もちろんお客さんいたらだめだけど、もしラッキーで貸し切りになることがあれば、均等にあったまるし、おすすめです。

楠元:いいですね。

万平:あとは敢えて言うなら、排気口の下。新鮮な空気が入ってくる吸気口は下にあって、大体上についてるのが排気口。そこから空気が逃げて行く=全体の熱い空気が全部集まる、その真下。そこが一番いいですよ。

楠元:ちょっと探してみます。

万平:その真下に座ってる人とかは、たぶん超サウナ好き。

楠元:争奪戦ですね。

万平:そうそう。僕は、大体サウナ室入ったら、探しちゃう。

楠元:(笑)。もっとこうしたら楽しめるってあります?

万平:今、ハマって2ヶ月くらいって、一番楽しい時期じゃん。ないです、ないです。そんな大先輩みたいな扱い、やめてください(笑)。もう自由で。とにかく、いろいろ行ってみて自分の好みの湿度と温度を探してみるっていうのが、単純に楽しいはず。ストーブの種類も違ったり、座るところも二段式なのかスタジアムなのか、とか。いろんな所に行って、ココってこうなんだって違いを発見していくといいと思います。

楠元:わかりました。もう次のサウナが楽しみになってきました。今日は、ためになるお話を本当にありがとうございます! 最寄りの行けていなかったサウナ専門のところにトライしたいと思います。

万平:それ僕も一緒に行きたいな(笑)。じゃサウナ室、待ち合わせで!

マグ万平Profile
人力舎所属・スクール JCA18期生。お笑い芸人として活躍する傍ら、サウナ・スパ健康アドバイザーの資格を持ち、年間約250回サウナに通う。さらに熱波師として都内サウナ施設にも勤務。サウナへ愛と飽くなき探究心から自身のサウナ番組も担当、数多の番組に“サウナ芸人”としても出演している。BS 朝日「サウナを愛でたい」、MRO ラジオ「のちほどサウナで」他。
Twitter @magmanpei

Words:Mai Otsuki Photos:KOBA Edit:Misaki Yamaguchi