最優秀作品がプロダクトに!貝印主催コンテストから誕生した限定アイテムをチェック
オーバーライドでは、昨年行われた「KAI Hat & Head-piece Competition 2022(以下、KHHC2022)」の取り組みとして、最優秀賞を受賞した軍司隼輔さんと共に、お客様に手に取っていただけるプロダクトを制作してきました。いよいよ9月30日(土)、受賞作品をもとに生まれた帽子がオーバーライド 神宮前、南堀江、オンラインストアに登場します。
今回は軍司さんご本人をお招きして、KHHC2022のお話や作品、プロダクトのコンセプト、こだわりなどを詳しく伺いました。オーバーライドスタッフ宮坂と共に、双方の視点でプロダクトの魅力を深掘りします。
KAI Hat & Head-piece Competitionとは?
縫製ハサミの開発・製造においても長年の歴史を誇るグローバル刃物メーカー貝印が2022年に初めて開催したハットおよびヘッドピースのデザインコンテスト。審査員は、フランス国家最優秀職人章の称号をもつHat & Head-piece designerの日爪ノブキ氏ほか。
https://www.kai-group.com/kaihat/
KHHC2022に参加したきっかけやエピソード
宮坂:コンテストに応募されたデザイン画を見たときに「すごいなぁ」というのが率直な感想でした。帽子というよりアートを見ているような感覚になりますよね。ぜひ軍司さんの背景や、参加されたきっかけを聞かせてください!
軍司:ありがとうございます。当時は、美術学校でグラフィックデザインを専攻していて、お店づくりやプロダクトの見せ方など、ブランディングについて学んでいたのですが、実際に手を動かしてものづくりがしたいなという気持ちが湧いてきているタイミングでした。そんなときに、ちょうどKHHC2022の募集を目にしたんです。
コンテストの流れとしては、まずデザイン画を描いて応募し、受賞した人に貝印のハサミが贈呈され、それを使って実物を作るというものでした。そこからさらに選考で最優秀賞が決まるのですが、きっかけは、その贈呈される貝印のハサミが欲しい…!というところでした (笑)
宮坂:意外なことに、はじめはハサミが目当てだったんですね!(笑)
軍司:はい、最初は。ものづくりにハサミは不可欠ですが、学生にとっては高価なものなので…欲しいな、このチャンスを逃す手はない、と。ダメ元でもいいから応募してみようと思ったのが始まりです。
宮坂:なるほど。ちょうどものづくりに興味が湧いていたタイミングということも重なったんですね。
軍司:そうですね。いざ賞をいただいて実際にハサミを手にしたときに、どんどん実感が湧いてきました。いい意味で「いけるんだ…!」という勢いのようなものがついて、そこからは最優秀賞を目指して帽子づくりに励みました。
宮坂:それで出来上がった帽子が、これですね。最優秀賞を獲得されたときは、どんなお気持ちだったんですか?
軍司:発表の日はまったく何も知らされておらず、むしろ落ちたのかなと思っていたんです。なので、式本番で受賞を知ったときは本当に、本当に、驚きました…!そのあとに行かせていただいたパリ研修での日々、世界的なヘッドピースデザイナーである日爪ノブキさんとお話させていただいたこと、もちろん今回のプロダクト制作も、どれもが刺激的で貴重な体験となっています。
受賞作品spacescapeについて
宮坂:受賞された作品について、詳しく教えてください。
軍司:コンテストの募集テーマが「Ocean Blue」だったんです。それで、まずオーシャンブルーとは何だろうと、考えました。日本語で「海の青」。海の青を思い浮かべたとき、見る人の心情、時間、空気の状態や、地域によって違うものだと思いました。だとしたら、改めて海の色ってなんだろうと思ったとき、僕は「その場の空気」だと考えました。
曖昧な空気というものを実際に形にするとどうなる?帽子という物質に落とし込んで実在させたとしたらどんなものだろう?そこを表現するのがこの作品への挑戦でした。
宮坂:なるほど。経緯を聞くとより一層、興味が湧きます!作品名が「spacescape」ですが、その解釈が込められているということですか?
軍司:その通りです。「space(空間)」に「〜scape(景観、〜の景色)」という接尾語を合わせた造語「spacescape」に。海の色のように曖昧なその場の空気・空間を目に見える形、帽子に落とし込みました。
ブルーを使うのではなく、染色する前の生成りの色にすることでも、今回のコンセプトを表現しています。
宮坂:見る人や、時間、場所によって色が違う、というところですね。
軍司:はい。また、海は人間が生まれるずっと前から存在する自然。なので素材も人工物より自然を感じられるものを使いました。実際に使用した竹や流木は、すべて自分の手で取ってきたもの。コンテストの審査員である日爪さんの言葉をお借りすると、まさに“原始的”なものを、できるだけ採用しています。
宮坂:すごい!自然の中からご自身で材料を集めてきたんですね!
今回販売するプロダクトを深掘り
宮坂:ものづくりがしたい、ハサミが欲しいというふたつの動機がきっかけで始まって、実際にハサミはもちろん、ものづくりをする機会も手に入れられたのが本当にすごいなと思いました。今回の受賞がきっかけとなって、お客様にかぶっていただける素敵なプロダクトがお店に並ぶことをうれしく思います。
軍司:こちらこそ、ありがとうございます!服飾に携わっていきたいと思っていた僕にとって、本当に貴重な経験をさせていただき、感謝しています。実際に販売するプロダクトとして帽子を制作するのは、コンテストでの制作とはまた違う視点での作業やプロセスでした。
宮坂:出来上がった帽子を見て、個性的でかわいい!というのが第一印象です。かぶってみたくなるデザインですよね。
軍司:嬉しいです。アート寄りだったコンテスト作品を、生活に寄り添う帽子にするという中で、元のアイデンティティをしっかりと残しながら、実用性をもたせるというところで試行錯誤しました。オーバーライドのデザイナーさんにも、材料から工程まで、たくさんのご提案をいただき、おかげさまで、ようやく商品化に辿りつきました。
宮坂:自然由来の素材や、生っぽい雰囲気に、コンテスト作品に共通するコンセプトやアイデンティティが感じられます。実際には、どうやってかぶるのがおすすめですか?こんな人におすすめしたい、などあればぜひ教えてもらいたいです!
軍司:そうですね。根本にあるテーマのひとつが“自然”なので、自然でありたい人、自然体な人をイメージしていますが、どちらかというと、かぶった人が自然体でいられる、かぶる人の生活や気分に寄り添う帽子、ということを意識しました。自分の心に素直になれる、よりその人自身になれるような、心地いい帽子を目指していました。
宮坂:確かに、帽子自体がニュートラルな印象ですよね。自然体に寄り添うという軍司さんの狙いもあって、私も幅広い方に選んでもらえそうだな、と感じました。最近はレディースでもボンネット型や耳当て付き、紐付きなんかの帽子がすごく人気なので、男女ともにかぶってもらいたいですね。
軍司:はい。自分らしく自然体でいたいと思う、いろんな人にかぶってもらいたいです。
宮坂: 最近は、新しい形の帽子を好む方もすごく増えたので、そういった傾向にもすごくハマるんじゃないかなと思います。20代のお洒落好きさんにはもちろん、ご年配の方にもおすすめできそう。耳当て付きなので、涼しくなるこれからの季節に防寒もできますよね。自転車に乗る人なんかにも、実用的でいいですね。
軍司:ありがとうございます。
宮坂:この生成りの素材もシンプルで、どんなお洋服でも合わせやすそうです。ジャケットやシャツ、ニットとのコーディネートもかわいいですよね。いろんな方に提案できそうだな。
軍司:宮坂さんなら、どんなお洋服で合わせてもらえますか?
宮坂:私だったら、今着ているこういうジャケットとか、派手なニットとかに合わせてみたいな。秋冬のちょっとボリュームのある素材感のお洋服と、とても合いそう!チェックのジャケットとかもいい。いろいろ想像が広がりますね。
軍司:実はギミックもいくつかあって。その人その人によって、また、同じ人でもその日やシーンによって、何が“自然体”なのかは変わってくると思うので、いろいろとアレンジをして楽しんでもらえるようにもなっています。上の部分はしぼり具合を調整できるようになっていて、かぶる深さやサイズ感を変えてもらえます。
宮坂:いろんな風にかぶることができるって、すごく重要。耳当ても、おろしたり上げたりできますもんね。しかも、背景やストーリーのあるプロダクトってすごく素敵です。ただかわいいだけじゃなく、伝えたいポイントがたくさんありますね。お客さまも、やっぱりそういう話に興味を持ってくださいます。
軍司:帽子屋さんにそうやって言っていただけるのは、本当に嬉しいです。耳当てのアレンジですが、ガーリーな感じでかぶりたいときは、顎下で結んでもかわいいですよね。髪は出しても入れても、その日の気分によって変えてもらえたら嬉しいです。
宮坂:いろいろ印象を変えられますね。
軍司:前後を逆にしてかぶってもいいですよ。
宮坂:それは思いつかなかった!かわいい!これ、欲しいなぁ。まっさらだから、自分なりのアレンジを加えちゃうのも楽しそうだな、なんて思います。キャンバスみたいな帽子ですね。
軍司:はい。まさにそういうことをイメージしていました。審査員の日爪さんからもアイデアやアドバイスをいただきながら構想していく中で、ペイントしてもらっちゃってもいいな、なんて、そういった話も出ていて。人によって、人に染まる帽子にしたい。装飾などをあえてつけなかったのも、そこを大切にしたかったので。
宮坂:確かに。自分で描いたりしてもいいし、ワッペンなんかをつけてもいいし。ひとつしかない自分だけのものが作れるというのも、すごくいいですね。
今回のプロジェクトを終えて
軍司:オーバーライドの帽子は、帽子好きが帽子として買いたい、帽子好きによる帽子好きのための帽子。それを作っている会社だなと。一緒にお取り組みさせていただく中で勝手に感じ取るものがたくさんあって、本当にいい場所だなぁと感じていました。これからもそういう場所であってほしいなと思いますし、とても感謝しています。大好きな場所になりました。
宮坂:嬉しい!ありがとうございます。ご自身では、今後はどんな活動をされる予定なのですか?
軍司:今回のプロジェクトで、その人がその人らしくいられる帽子を作りたいと思っていました。これからも、その人が、身につけている自分を心から良いと思えるようなものづくりをしていきたいと思っています。また、帽子づくりにも挑戦するかも!?いろいろ考え中です!
宮坂:楽しみです!軍司さんには、ぜひ店頭でお客さまと直接お話して欲しいくらい!ファンになっちゃう人、多いと思います(笑)今回は、いろいろ聞かせていただきありがとうございました。
かぶるほどに帽子の新しい楽しみ方が見つかる軍司さんとの共創プロダクト「OVERRIDE×Shunsuke Gunji spacescape hat」は9月30日(土)からオーバーライド 神宮前、南堀江、オンラインストアで限定販売されます。ぜひ実際にかぶってみて、自分らしいかぶり方探しを楽しんでください!
※出演スタッフやコメント詳細は、2023年9月時点の情報です。
Words: Mai Otsuki Photos: KOBA Edit: Misaki Yamaguchi , Haruna Kato