『帽子のオアオア物語』Vol.20 プリュームの話
「プリューム」は、帽子の羽根飾りのことです。おしゃれな帽子に羽根を飾るのは珍しいことではありません。
いつも見慣れた帽子であっても、羽根を挿してみるだけで、その印象は一変するものです。
「心には愛を、帽子には羽根を」であります。
プリューム plume の歴史には古いものがあるようですね。おそらくは古代に遡るのでしょう。
古代には、弓矢で鳥を射ることもあった。弓で鳥を得て、その羽根を帽子に挿した。弓の名人であることの証として。
たぶんプリュームはそんなところからはじまっているものと思われます。
プリューム plume は、1399年頃からの英語であるらしい。これはラテン語の、「プルマム」plumam から来ているんだそうです。「羽毛」の意味であったという。
「手袋は安息香や霊猫香より芳しい。羽根飾りは一本につき一ルイという高価なものだ。」
フランスの作家、テオフィル・ゴーチエが、1835年に書いた『モーパン嬢』の一節に、そのように出てきます。
これは当時、フランスの洒落者についての描写として。「高価」とはどれくらい高価だったのか。一本、一万円だとか。それを何本が挿したのでしょうからね。
そういえば帽子のプリュームは奇数が多い。一本、三本、五本といったところでしょうか。
少なくとも1830年代、フランスの洒落者は、プリュームに凝ったことは間違いないでしょう。