サウナとコラボサウナハットについて語るwithマグ万平さん・広岡ジョーキさん【サ談会vol.5】
OVERRIDE Journal「サ談会」でもお馴染み、サウナ大好き芸人マグ万平さんによるブランド「マグオーネ」と帽子専門店オーバーライドによる新作のコラボサウナハットがついに完成!
そのお披露目を兼ねて、今回もサ談会を開催。今回、初参加していただいたのは、“サウナ×人”を掘り下げる書籍『トトノイ人』の発行人で、マグオーネのデザインを務める広岡ジョーキさん。
コラボの仕掛け人である万平さん、ジョーキさん、オーバーライドのデザイナー天野の3人で、最近のサウナ体験から今回のコラボ秘話や商品の詳しいこだわりまで、たっぷりお話してもらいました。
●目次
今回サ談会を行ったのは…
ホームサウナの話
最近のサウナ体験
サウナの入り方のこと
サ飯の話
マグオーネについて
コラボサウナハット誕生
コラボサウナハットのかぶり方
今回サ談会を行ったのは…
文化浴泉
昭和3年から地元に愛される銭湯。最近リニューアルしてさらにパワーアップした話題の文化浴泉さんにお邪魔しました。ホームサウナに最高!
ホームサウナの話
万平:お二人は、最近サウナ行ってます?
ジョーキ:おととい行きましたよ。
天野:僕は先週京都に行って、数か所行ってきました。
ジョーキ:お。ルーマとかですか?
万平:今ね、あそこ改装中なんですよ。屋上の外気浴フロアを改修してるみたいで、オープンが楽しみですね。
ジョーキ:そうなんですね!梅湯さんは行きました?
天野:はい、行きましたよ。
ジョーキ:その梅湯を経営されている方の弟さんが店長を務めている十條湯っていうのが東京北区にあるんですけど、ゆとなみ社さんがやってるところ。僕、今そこがホームなんですよ。
万平:普通に「僕のホーム」って言ってますけど、銭湯の息子じゃないですよね(笑)
ジョーキ:はい。別に居候とかでもなくて(笑)デフォルトで行ってるから、もはやホームです。
万平:銭湯だけどバーカウンターみたいなのがありますよね。
ジョーキ:そう、喫茶店がついてるんです。喫茶深海っていう。
万平:そこでサウナ終わりにクリームソーダ、なんて最高ですよね。
ジョーキ:本格的な喫茶なんですよ。なんか癖になっちゃって。本読みながらデザートも食べられますし。散歩してサウナ入って喫茶して、帰ってごはん。なんかいいサイクルなんですよ。
万平:めちゃくちゃ居心地いいですよね。
ジョーキ:はい、ホームの条件はやっぱり居心地。なんにも緊張しないんです。万平さんはどんな感じですか?
万平:僕はもう、いつも通りですね。家の近所の古〜いサウナ。昔からあるところ。
サウナって、新しいところを開拓する楽しみってあるじゃないですか。行ったことない施設とか、エンタメみたいなサウナ室、めちゃくちゃ冷たい水風呂とか。そういうのって遊園地に遊びに行くような感覚ですよね。
ジョーキ:要は、ハレのサウナですね。
万平:そう。それとは逆に日常の中のサウナもありますよね。質素なんだけど、なんかホッとするっていう。
ジョーキ:味噌汁みたいなのですね。
万平:そうそう、家のごはんの。それがホームサウナ。毎日ごちそうじゃなくていいというか。
ジョーキ:料理研究家の土井善晴先生と一緒ですね。土井先生の『一汁一菜でよいという提案』っていう本がありますよね。
万平:それ!具沢山の味噌汁と、漬物だけで十分じゃんっていう。
ジョーキ:土井先生の話は、サウナが好きな人は、けっこうピンと来ると思うんですよ。食事って食べるだけじゃなくて、準備から片付けまで入れて、毎日繰り返すものですよね。それ、生活の中にあるサウナの概念と似てるなぁって。
万平:うんうん。もはやホームサウナ=土井先生ですよね(笑)
ジョーキ:怒られるかもしれないけど、そうですよね(笑)一汁三菜ってハレの料理、普段の生活や日常は一汁一菜でいいっていう。本当にホームサウナに求めるものと似てますよね。
万平:天野さんのホームサウナってどういうところなんですか?
天野:僕、土井先生にやられてしまった話があって…
万平:えっ、ホームサウナのことじゃなくて土井先生の話?(笑)まあ一応聞きましょうか?…一応ですよ。
天野:昔テレビを見てたら、土井先生がおにぎり作ってて。僕、おにぎりは軽く握ったものが好きなんです。それで握るのは3回だけで、ふわっと作るっていうこだわりがあったんです。でもテレビで見た土井先生は、炊きたてのお米を軽く1、2回、手でやさしく包んでザルに置いただけ。で、はい完成って。当然三角でもないし、形はバラバラで。
ジョーキ:おにぎらずですね?
天野:はい。でもそれがめちゃくちゃ美味そうで。3回すら握らなくていいんだって。で、それからは土井先生のおにぎりを真似してて。
万平:なるほど…って、何の話してるんですか!?じゃあ、もう今回の新作サウナハットは、そんな感じでできたってことでいいですか?(笑)
ジョーキ:でしたら新作のサウナハットは何回で握ったんですか?
天野:もちろん1回も握ってないので、おいしいと思います(笑)
最近のサウナ体験
ジョーキ:最近のおもしろいサウナの体験だと、渋谷SAUNASのケロサウナで受けたウィスキングですね。ウィスキングに特化した空間になってるんです。高めの席に横になるんですけど、天井も全部がケロ材でできていて。その質感とか自然光の中で受けるのが、すごいんです。その空間の印象が強く残ってて。こういう体験をさせるために作ったんだなっていうことが分かります。
万平:今まで、その体験のためだけに作られたサウナ室っていうのはなかったですもんね。
ジョーキ:自然光でっていう、いい体験でしたね。
万平:行ったことがないサウナ施設に行ってみたいっていうのはもちろんあるんですけど、施設に行く喜びよりも、そこでどういう体験が得られるかっていうことに興味があります。
ジョーキ:そこで一体、自分はどんな状態になるんだろうっていうことですよね。
万平:そこで体験した自分の感覚に価値があるというか。そういうのを探し求めてる自分がいますね。それで言うと、僕が最近おもしろい体験をしたのは、沖縄なんですよ。
ジョーキ:へえ〜、沖縄ですか。
万平:沖縄ってものすごく暑いじゃないですか。サウナがそもそも少ない。やっぱり寒い地域の文化なんでロシアとか北欧は多いんですけど、赤道付近の国なんかはあまりないんですよね。でも沖縄に「亜熱帯サウナ」っていうのがあって。
ジョーキ:最近できたんですか?
万平:去年できました。そこは、おもしろい体験ができましたね。本州じゃ見られない植物がたくさんあって。沖縄でも北と南で土の違いから育つ植物が違うんですけど。そのエリアでしか育たない植物が原生林みたいにうわーって生えてて、その森を切り拓いて作ったサウナなんですよね。
ジョーキ:外なんですか?
万平:外です。ぽつんと。サウナ施設っていうよりも、本当に森の中にサウナとか休憩所があるっていう感じ。森の中での外気浴は、異空間でした。北海道とか本州、他にもいろんなところで外気浴してきたけど、特別でしたね。そこに行かないとできないような体験。サウナの温度とか水風呂じゃなくて、そこにしかいない蝶々とか天然記念物とか見て喜ぶようになっちゃいました(笑)
天野:いいですねー。僕は最近初めて行った京都のサウナの体験がよかったですね。
万平:初めて行く施設って、どれだけ昔からあったとしても、自分にとっては初めてだからめちゃくちゃテンション上がりますよね。
天野:めちゃくちゃ上がります。
万平:なんですかね、あの高揚感は。初めてCDを買ったときみたいな?新しいTシャツを着るときみたいな感じ?
ジョーキ:あと施設って、絶対にその空間を作ってる人のカラーが出るじゃないですか。そういうのを感じられるのも、めちゃくちゃ面白いですよね。入った瞬間にムードが分かったり。
万平:うんうん。
ジョーキ:地元で愛されてるサウナはやっぱりそんな感じの空気だし、そういうのを入り口で感じたりします。
万平:めちゃめちゃ分かります。匂いとか、音とか。
ジョーキ:言葉じゃないものにすっごい集中してますよね。サウナの温度とか数値的なものじゃない、ムードみたいなものにやられることはすっごいあります。
万平:最終的にやっぱり体験が大切なんだなって。「サウナイキタイ」を見て行った気になってても、自分がどう感じるかはやっぱり実際に行かないと。
ジョーキ:自分が行ってみたら、人が感じてることと全然違ったりすることありますよね。評判はいいのにピンと来なかった、もあるし、誰も話題にしてないのにめっちゃ良かったとかもあります。
万平:ありますねー。本当に感覚の遊びだなって思います。
サウナの入り方のこと
万平:暑いときは、やっぱり水風呂からスタートすることが多いですね。服脱いで体洗って、まず水風呂。暑いから施設に向かいながらすでに1セット目が始まってる。真夏は出るときにキンキンに体冷やしてから外に出ると、めっちゃ気持ちいいです。
ジョーキ:ぐわんってきますよね。
万平:血管が戻ってる感じがすごい。すぐに歩かないで施設の前でしばらく日光を浴びてます。勝手に逆外気浴って呼んでますけど、めっちゃ気持ちいいです。
ジョーキ:私はコロナ禍以降、散歩が挟まるようになりました。今までは電車を使ってピンポイントで行ってたんですけど、まず歩いてからサウナ。
万平:歩いて行くとなんか違います?
ジョーキ:全然違います。電車の中で座ってスマホ見たりとか本読んだりすると、サウナに向かう時間は、サウナと途切れてる。だけど歩いて行くと、家のドア開けてからそのままサウナと繋がってる感じです。それで、歩きながら考え事してます。
万平:どんなこと考えてるんですか?
ジョーキ:すっごい暗いことです。
万平:サウナに向けて、あえて負荷を入れてるってこと?
ジョーキ:そのときの悩みとか、考えたことを自分にメールしたりしてます。歩いてるときってすごい考えるじゃないですか。で、内省して、メールで送りきってからサウナ。
万平:なんか、サウナ室内でやってることと似てますね。それを家を出たときからやってる感じ。
ジョーキ:前は悩みを持ってサウナに行ってたけど、最近はひとしきり考えて、一回捨ててからサウナに入ってます。
万平:面白い、そんな入り方はしたことなかったなぁ。
サ飯の話
天野:最近、ちょっと食べただけで太っちゃうんですよ。でも、サウナ入ったあとってめちゃくちゃお腹空くじゃないですか。だからどうしても食べ過ぎちゃう。こういうことって、なんか意識してますか?
万平:確かに、そういう年齢になってきてますよね。
天野:若いときはなんでもよかったんですけどね。
万平:毎日生姜焼き定食、唐揚げ、カレーじゃダメですもんね〜。
ジョーキ:血管詰まりますよね。
万平:でも美味しいんですよね、そういうTHEサ飯みたいなの。
天野:万平さんはだいたい家で食事するんですか?
万平:家で仕事してるときは、基本家で食べます。奥さんも働いているんで、僕が夕方にサウナ終わってそのまま晩御飯を作るんですよ。でも言われてみると、ほぼ茶色かも。サウナ終わりの脳で作ってるから、無意識に茶色いものを欲してるみたい。
ジョーキ:私は最近、サウナのあとに食べる物が変わってきました。蕎麦とかが美味いです。
万平:あ、分かる!僕は、出汁系がきてます。出汁の美味しさったら!
ジョーキ:お、これはまた土井先生の話に戻ってきましたね。
万平:(笑)味噌汁もそうなんですけど、僕は福岡出身なので、もつ鍋を家庭料理として家で作るんですよ。そのときに、あごだしを使ったりとかして。最近出汁の美味しさを再発見しましたね。確かに、年齢とともに少しずつ変わってきてるんでしょうね。
天野:僕からもサ飯の提案いいですか?今年、サ旅で富山に行ったんですけど。
ジョーキ:あ、私の出身地です。
天野:富山ってホタルイカありますよね。で、ホタルイカの素干し。
ジョーキ:ああ、あれ美味しいですよね。
天野:今日持ってきたんで。ちょっと待っててください。
万平:え!?天野さん、急にサ飯の話ふってきたと思ったらホタルイカ持ってきたの?
ジョーキ:ルンルンでホタルイカ取りに行ってるし…(笑)
万平:サウナ終わりにこれをぽんって口に放り込んで?ガム噛むみたいな感じかなあ?
ジョーキ:塩分補給になりますよね。
天野:これめちゃめちゃうまいんですよ。もう何回もお取り寄せしてます。
少し柔らかい食感で身の甘さとワタの苦味が絶妙で。よく噛むから満腹感も得られますし。天然塩のみで仕上げられてて、ビタミンが(中略)それにホタルイカって、ちっちゃいから携帯性抜群ですし。
万平:えっ、もしかしてこれ、オーバーライドがコラボしたホタルイカじゃないですよね?
天野:そんなわけないじゃないですか(笑)
万平:じゃあ、天野さんのただのサ飯のイチオシ?
天野:ですね。体形が気になりだしたサウナ好きに。おすすめの食べ方は、まずは足から味わってもらって…
万平:もしかして土井先生の位置、築こうとしてます?(笑)
天野:(笑)まあ、どうぞ食べてください。
ジョーキ:まさか、ここでホタルイカの素干し食べるとは思いませんでした(笑)いただきます。
万平:あ、ウマっ!噛めば噛むほど旨い。これはいい…っておい!なかなか本題に辿り着かないんで確認ですけど、今日はサウナハットの話ですよね?あ、でもこのホタルイカ、サウナハットかぶってるみたいな形してるわ(笑)
マグオーネについて
天野:では、そろそろ本当に本題に入らないと。万平さん、マグオーネについて教えてください。
万平:今回オーバーライドとコラボさせてもらったマグオーネっていうのは、僕がプライベートで製作しているサウナグッズのブランドなんですけど、今までは手売りだけでやってたんです。サウナイベントのときに、キャリーケースに詰め込めるだけ入れて電車で行って、現地で販売するっていうスタイル。
ジョーキ:行商みたいな感じですね。
万平:通販があたりまえの時代に。今は令和なのにね。
ジョーキ:お店で買えるのは、唯一東京の神田ポートですよね。
万平:タオルを置いてもらってます。最初に手売りをさせてもらったのも、神田ポートさん。
天野:これまでどんな感じで作ってきたんですか?
万平:たとえば、このロンTのイラストは、漫画『サ道』の著者タナカカツキさんが描かれたもので。好きなように使っていいよって言ってくださって。それをどうデザインするかっていうイメージはあったんですけど、技術はないので、ジョーキさんに相談しました。
ジョーキ:ある日突然、万平さんからカツキさんと私に相談したいっていう連絡があって。なんだろうと思ったら、ブランドを作りたいっていう話だったんです。
万平:自分が着る服を作りたいって思ったのがきっかけで、連絡させてもらったんです。
ジョーキ:で、カツキさんと3人で打ち合わせして。初めは万平さんのタレントショップ的な構成を話してたんですけど。
万平:そう。80〜90年代に、タレントグッズってめちゃくちゃ流行ったんですよ。竹下通りでよく見かけたような、あれっぽいデザインはどうかって話になって。最初はそれで進んでたんですよね。
ジョーキ:それで、いろいろなパターンのデザイン案を出しました。最初ブランド名も決まってないときに、いろんなアイテムでイメージ作ってて。当時万平さんは、お子さんが小さかったので、ロンパースにロゴを入れたりして。
万平:そのとき仮のブランド名にしてたのが「マグハウス」だったんですよ。それをロンパースにのせたから、もうこれは「○iki house」じゃんって。
ジョーキ:そう。これは絶対、訴えられますよってね(笑)
万平:サウナって人が集まる場所であり、落ち着く空間でもあるじゃないですか。それに、疲れを取ったり元気になったりする家みたいな場所だなっていうのもあって「ハウス」という言葉を使ってたんです。けど、某有名子供服ブランドさんと響きが似すぎていたのに気づいて再考して(笑)
で、フィンランド語で、おうちとか場所、空間というニュアンスで探したらHUONE(オーネ)って出てきたんですよね。
ジョーキ:部屋ですね、要は。
万平:それで、ブランド名は「MAG HUONE (マグオーネ)」になりました。
ジョーキ:家から部屋に、ちょっとだけ小さくなって「マグの部屋」って意味です。
天野:そうだったんですね。マグオーネって、あんまり詳細が語られてなかったので、この機会にいろいろ聞けてよかったです。でもマグオーネが欲しくてもほぼ万平さんの手売りだからなかなか手に入れられないんですよね…
万平:最終的にはサイトを用意して、っていう構想はあるんですけどね。地道にがんばります!
天野:今までのアイテムは、どんなものがあるんですか?
万平:ロンTはカラバリが白と黒があって。これもジョーキさんにデザインしてもらって。
ジョーキ:基本的に、ひと捻りあるデザインにしたいなっていうのがありまして。ロンTは「抱きしめロウリュ」っていう名前で、左手側は水をすくってかけるラドル、右にはサウナストーンが描かれています。両腕を合わせるとロウリュしてるみたいになるっていう、ちょっとしたギミックがあります。
万平:こういうポーズすると、ロウリュできてあったかくなるよっていうね。現実には自分を抱きしめるとあったかくなるっていう。
万平:あとは、このタオル。ロウリュして蒸気が上がってるように見える陰影がすごくないですか?
ジョーキ:ロウリュで蒸気があがる感じのグラデーションを「織り」で表現してもらいました。
万平:プリントじゃないので、インクがごわついてガサガサすることもないし、洗えば洗うほど、柔らかくなるんですよ。だからタオルとしても優秀なんです。
ジョーキ:タオルの業者さんにこんなのできますかねーってグラデーションの相談をしたら、やったことないけどやってみますって言ってくださって。織り機を調整してくれて。
万平:いろいろ協力してくださったんです。めちゃくちゃいい人ですよね
ジョーキ:ですね。そんな感じでこの「ジャカードロウリュタオル」ができたんです。
天野:これすごくいいですよねー。今回、新作のサウナハットはマグオーネとしては初めてのコラボということでいいんですか?
万平:そうなんですよ!
コラボサウナハット誕生
天野:今まで万平さんとは、オーバーライドのサウナ企画で何度かお話させてもらうことがあって。そのときに万平さんモデルのサウナハットを作りましょうって、撮影中のサウナ室で話してたんですよね。
万平:冗談半分で、僕が天野さんに言ってたんですよね。「いつですか?万平モデル!」って(笑)
天野:そのとき、万平さんからヒントもらってたのと、僕もアイデアがあったのでとりあえずプロトタイプを勝手に作ったんですよね。
万平:それで突然この初号機を持ってきてくれて。天野さんと僕で、渋谷スクランブルスクエアのお洒落なイタリアンで打ち合わせしましたよね。周りに女子しかいないところで二人のおじさんがサウナハット見ながら、ああだ、こうだって(笑)
天野:そうでしたね(笑)
万平:もうこの初号機の時点でめちゃめちゃ良くて。さらにそこから、僕の要望とか改良ポイントを話し合って。
天野:万平さんは普段からキャップをかぶっているイメージが強かったのと、サウナハットでキャップ型ってあんまり見ないので、万平さんのシグネチャーモデルとして作るならキャップの形しかないって初めから考えてたんですよ。
万平:サウナハットって汗が付くし気軽に洗いたいですよね。だから、濡れてもいいし洗濯が楽なタオル地とかが多い。でもこれは、どうみても普通のキャップ。がっつりキャップなのにサウナハットとしても使いやすいっていう条件で考えると、実は課題がめちゃめちゃあって。そんなのも、もう、全部天野さんが対応してくれて。
天野:これは初号機ですけど、実はこれの前に零号機があるんです。それをサウナでテストしたらツバが変形しちゃって。
一般的な野球帽のツバって、硬いから洗濯機で繰り返し洗うとツバ先だけ極端に生地が破れやすいんですよ。だから洗濯機で洗える帽子を作る場合は少し柔らかい芯をツバに使うんです。それって普通ポリエチレン製で。ポリエチレンって熱で縮みやすいからサウナでツバが変形してしまいました。それじゃまずいってことでいろいろ探して、熱に強いポリエステルのツバ芯を見つけて。
万平:ツバにポリエステル製の芯は、普通使わないんですか?
天野:熱に強いキャップっていう特殊な帽子を作ることって今までなかったので、僕は使ったことがなかったです。
万平:90℃くらいの空間でかぶるのを想定したキャップなんて普通作らないですもんね。
天野:しかも洗濯機で洗えなきゃいけないっていう。
万平:これは洗濯機でそのまま洗っても、ツバが割れたり縮んだりしないし、もちろんツバ先だけが破れたりもしにくい。ツバ自体は柔らかいんですけど、かぶったときは形が変にならない。強度はかなりありますよね。普通、キャップを洗濯機に入れたらツバが歪むじゃないですか。
ジョーキ:帽子がさらされる最も過酷な条件って洗濯機ですからね。それをクリアできるってことは、カバンの中に突っ込んでも大丈夫ってことにもなりますよね。
万平:ちなみに、これはテスト用で使わせていただいてたもので、めちゃくちゃハードに何度も洗ってるサンプル。使ってる生地も天野さんが最適なものを提案してくれて。
天野:「ベンタイル」という生地を使っています。1930年代とか40年代くらいにイギリス空軍のパイロットが海に落ちたとき、服の中に冷たい海水が入るのを遅らせるために開発されたといわれる撥水生地がルーツの、日本製の生地です。綿100%の糸を極限まで高密度に織ることで水を通しにくくするっていうローテクな高機能素材。
万平:ゴアテックスみたいなハイテク生地がまだなかった頃の高機能素材ですよね。
天野:ですね。でもベンタイルって、ハイテクな透湿防水の素材みたいにポリウレタンとかを使ってないので熱に強いし、洗濯機で繰り返し洗いながら長く使っていくと綿素材特有の深みのある経年変化が楽しめるんですよ。
万平:いいですよね〜。
天野:あと万平さんはウィスキングの施術もされるので、施術のときにもかぶってもらいました。それで分かったんですけど、初号機はかぶっててズレやすかったんですよね。サウナハットって普通は動かない状態でかぶるものなので、楽にかぶれるように大きめのサイズ感で作ってたんです。
万平:腕を動かしたりしてるうちに、耳当て部分が前に来ちゃったりしたんです。
天野:それで、後ろにベルトアジャスターをつけて、フィット感を調整してかぶれるようにしました。基本的なサイズは大きいままなので、普段は楽にかぶれるし、キュッとベルトを引くとズレにくくなるので、ウィスキング中はズレを気にせず施術に集中してもらえます。
万平:このアジャスターが付いたことでフックに掛けやすくなって、さらに便利になりましたよ。他にもアウフグースを受けるときだったら、風で飛ばされにくいようにもできますよね。
あと、耳当て部分の形は、ウィスキングしてるとき熱くなりやすい耳と首の後ろをしっかり守りたいっていう僕の希望も見事に叶えてくれてる。
天野:耳当て部分を上げてかぶるときは、紐を結ぶとバランス良くかぶれます。
万平:僕は、外では耳当て部分を上げて普通に帽子としてかぶって遊びに行って、サウナで使うときに耳当てを下ろします。サウナで使ったあとも、全然びっちょびちょにならないんで、このままかぶって帰ることもできるんですよね。
天野:濡れているタオルを頭に巻いてサウナに入ると、サウナ室から出る頃には蒸しタオルみたいになってて頭も熱くなってるじゃないですか。濡れていると、断熱性にも影響が出るんです。このキャップは、断熱性を高めるために高機能な中綿を入れているんですが、生地がベンタイルなのでびちょびちょになりにくい。それでしっかり断熱性が保てるっていう仕組みです。コットンだから透湿性があって蒸れにくいのも、サウナハットとしていいですよね。
万平:ほんといろいろフィールドテストして、ここまでくるのに半年以上かかりましたよね。
ジョーキ:で、万平さんから私のところに話が来たんですね。突然。
万平:はい。ここまではマグ万平モデルとして進んでいたんですけど、「サウナハットを出すなら、マグオーネとコラボするのはどうですか?」っていう話を天野さんからいただいて。それで、ジョーキさんに相談を。
ジョーキ:そこから私も打ち合わせに参加して、デザインを入れていくっていう作業ですよね。ボディのカラーをどうするかだったり、どんな刺繍をどこにどう入れるかで何パターンもサンプルを作ってもらいました。
万平:ですね。それでサウナで耳当てを下ろしたときに、ギミックがあるとおもしろいよねっていう話になって。
ジョーキ:最終的に、カツキさんに描いていただいたトントゥを耳当ての外側に刺繍で入れることにしました。
万平:トントゥは、フィンランドのサウナの精霊。日本にも八百万の神みたいにいろんなところに神様が宿るっていう考えがあるけど、似たようなものが向こうにもあるんです。
ジョーキ:なので、このサウナハットに宿るトントゥみたいな感じもありますよね。
万平:トントゥは耳当てを降ろしたときに耳元に現れます。耳当てと同色になってるから、光を抑えたサウナでトントゥが耳元でささやいているみたいですよね。それで「ささやきトントゥCAP」っていう商品名です。
ジョーキ:よく見ないと分からないくらいの、さりげないデザインですよね。
万平:よーく見たら「あれ?トントゥいるじゃん!」って、サウナ室で隣に座ったおじさんだけが気づくみたいなのもいいですよねって。派手なカラーとか、いろんな場所に刺繍したパターンもあったんですけど、なんか僕らっぽくないかもってなって。
ジョーキ:それで、どんどん引いていったんですよね。そこも土井先生の一汁一菜でよい的な感じに。
万平:土井先生、また出てきちゃった(笑)
天野:あとは今回サウナハットのコラボだけでじゃなくて、マグオーネのロンT「抱きしめロウリュ」をサウナハットに合わせて別注カラーを作ってもらったんですよね。
ジョーキ:元々は白と黒の2色で展開していたのを、コラボのキャップの色に合わせてベージュと黒にしました。
万平:それからシルエットは、元々出していたものよりゆったりしたオーバーサイズに変更してて。
天野:サウナを出たあとはゆったりした服が着たいですし、ワイドなシルエットがいいですよね。
コラボサウナハットのかぶり方
万平:後ろにアジャスターが付いてるから頭が小さい方もかぶりやすいので、ぜひ女性にもかぶってもらいたいですね。
ジョーキ:逆にアジャスターを締めなければ、ロングヘアの女性でもサウナで髪の毛全部入れちゃえますよね。たぶん。
万平:そうですよね。あと、ヘアアレンジしたりして普段使いでも楽しんでもらいたいです。絶対かわいい。僕も一緒に出演させてもらっているんですけど、女性のモデルさんにかぶってもらったビジュアルもあるのでぜひ参考に見てもらいたいです。
天野:他には、耳当て部分を内側に入れてもかぶれるんですよ。
ジョーキ:本当だ!すごくスッキリしますね。
万平:あ、いい!このかぶり方は初めてやってみました。かぶり心地もいいなぁ。
ジョーキ:帽子の頂点にポッチがなくて洗練された印象に仕上がっているのも、このキャップの特長ですよね。
万平:ポッチがないから、上から叩かれても痛くないっていう。
天野:芸人さんの発想ですね(笑)
万平:もし、サウナ室でこれをかぶってくれている人に会ったら「マグオーネだ!」って、めちゃくちゃうれしいですけど、街中で見かけてもテンションが上がりそうです。
ジョーキ:それはほんと嬉しいと思います。
万平:街中でかぶってる人を見たら「これからどこのサウナに行くんですか?」って話しかけちゃいそう。
ジョーキ:その人の暮らしの中にマグオーネを着てサウナに行くのがルーティンになってるのかな、とか想像しますよね。
万平:あとは全然サウナに興味ない人が「かわいいからかぶってます」っていうのも嬉しいですよね。
ジョーキ:サウナハットって言わないと、普通にキャップですからね。
万平:今回が正式なお披露目なんですけど、実はちょっとした宣伝も兼ねて、初号機を他の撮影でもちょいちょいかぶらせていただいてて。でもサウナハットって気づかない方もたくさんいましたよ。「その帽子、サウナハットなんですか!?」って。それくらい帽子としてのデザインの完成度がすごい高いんで、普通に帽子としても、ぜひかぶってもらいたいです。
ジョーキ:フェスとかでかぶるのもいいですよね。
万平:確かに!
和気あいあいと進んだサウナトークは、これでもカットした話がたくさんあるほど。サ談会からもひしひしと伝わってくる溢れんばかりのサウナ愛が詰まった新作コラボサウナハット、ぜひ実際に手に取ってみてくださいね。
マグ万平さん、広岡ジョーキさん、ありがとうございました!
マグ万平
プロダクション人力舎所属。年間約 350 回サウナに通う。サウナへの愛と飽くなき探究心から日本だけなく世界中のサウナを巡っている。サウナ大好き芸人として自身のサウナ番組「マグ万平ののちほどサウナで」をはじめ、数多くのメディアでサウナの面白さを発信。
X(Twitter) @magmanpei
Instagram@magmanpei37
広岡ジョーキ
「サウナ×人」を掘り下げるインタビュー本『トトノイ人』編集発行人。最新刊のSESSION 014では、十條湯の再生プロジェクトを手がけたゆとなみ社の湊研雄氏にインタビューを行った。ちなみに、取材時に着ていた「TOTONOI Chair」のネオンサインTは2022年『PARCOサ展』の際に作ったオリジナルグッズ。
bccks.jp/store/totonoibito
天野
オーバーライドの通常ラインナップの一部をデザインしている。サウナシリーズに関しては全てのアイテムを担当。サウナ・スパプロフェッショナルの資格を取得済。好物は、浜浦水産のほたるいか素干し。
※インタビュー内容ならびに出演者の情報は、2023年8月時点のものです。
Words: Mai Otsuki Photos: Kazuki Miyamae Edit: Misaki Yamaguchi , Haruna Kato