『帽子のオアオア物語』Vol.16 ピンク・ハットの話
帽子と色は、密接な関係にあります。
たとえば、「グリーン・ベレー」。グリーン・ベレーというと、どうしても特殊部隊を連想してしまうところがあります。
あるいはまた、「ブラウン・ダービー」。「ダービー」はご存じのように、アメリカ英語。日本で「山高帽」、イギリスで「ボウラー」と呼ぶものを、アメリカでは「ダービー」となります。
アメリカでの「ブラウン・ダービー」には、「粋な遊び人」の意味もあるのです。これはまた、ハリウッドの、高級レストランの名前でも。
しかし、ブラウン・ダービーがどうして「粋な遊び人」の意味になるのか。十九世紀末、競馬場に通う紳士たちがよくかぶっていたからなんですね。
というよりも、当時、週末に、郊外の、競馬場に行くには最適の帽子だと、考えられていたのであります。
1920年に、イギリスの作家、D・H・ロレンスが発表した小説に、『恋する女たち』があります。この中に。
「………ピンクのストッキングをはき、黒とピンクと黄の飾りを帽子のへりにつけ、そのへりを少し垂らしていた。」
そんな文章があります。
これは「グドルーン」という女性の着こなし。文中、「へり」と訳されている部分は、ブリムのことなのでしょう。
私はここから、「ピンク・ハット」を想像したのですが。
ピンク・ハットは、それをかぶる女心を、明るくしてくれます。帽子の色と、心模様もまた無関係ではないのです。明るい気分になりたい時には、ピンク・ハットをかぶってみましょう。