『帽子のオアオア物語』 Vol.1 帽子力の話|OVERRIDE
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『帽子のオアオア物語』 Vol.1 帽子力の話

『帽子のオアオア物語』 Vol.1 帽子力の話

帽子には力があります。帽子をかぶると、元気が出ます。これもまた、「帽子力」でしょう。

では、どうして帽子を頭にいただくと、元気になるのか。胸を張るから。背筋がピンと伸びるから。背筋がピンと伸びると元気になるのは、当然でしょう。

むかし、フランスに、サン・サーンスという作曲家がいました。『6つのフーガ』などは、よく知られているところでしょうね。

サン・サーンスもまた神童で。二歳でピアノを弾き、三歳で作曲。六歳で、交響曲というのですから、怖るべき音楽家であります。

そのサン・サーンスの晩年の話なのですが。ある時、巴里の、マドレエヌ寺院に近い、「デュラン」に出かけた。「デュラン」は、有名な音楽出版社。

サン・サーンスは、「デュラン」を出るとき、帽子を間違えた。偶然、ダリウス・ミヨーの帽子と。ダリウス・ミヨーも、若き音楽家でありました。

たぶん、同じような、黒のソフト帽だったのでしょうね。

それからというもの、サン・サーンスの頭の中に、ダリウス・ミヨーの音楽が鳴りはじめて。

結局、元通り、帽子を交換して、音楽は鳴りやんだという。ウソみたいなほんとうの話。

團伊玖磨著『なお パイプのけむり』に出ている話なのですが。