『帽子のオアオア物語』Vol.14 ソリアの話

タナグラ人形というのがあるのは、ご存じの通りでしょうね。
小さくて、可愛い、女性像です。テラコッタの上に彩色されているのが特徴。
古代ギリシアの、人形。こればかりを蒐めているのコレクターもいるほどです。
1870年に、タナグラではじめて発見されたので、「タナグラ人形」の名前で呼ばれます。タナグラは、ギリシア、ボイオチアの、町の名前。
今からざっと二千年前の人形ということになります。
このタナグラ人形の中に見られるのが、「ソリア」tholia。
古代ギリシアの婦人が愛用した帽子なのですね。
「ソリア」はストローで編んだ、夏の帽子だったと思われます。ただし、そのスタイルが独特なのです。
クラウンはフラットで、クラウンが尖っています。
なにもストローとはかぎらず、フエルトでも、「ソリア」は仕上げられるのではないでしょうか。
二千年もの歴史ある帽子は、貴重品だと思いますよ。

出石尚三
服飾評論家、ファッション・エッセイスト。国際服飾学会会員。主にメンズ・ファッションの記事を執筆。著書も多数。60年代にファッション・デザイナー・小林秀夫の弟子となったのが、メンズ・ファッションの道に入った最初。幼少期からお洒落好き。好きな作家はサマセット・モーム。好きな画家はロートレック。好きな音楽家はショパン。好きな花は薔薇(ばら)。好きな色はピンク。好きな言葉は「夢」「希望」「愛」。昔の服からふっと新しいアイデアを頂くこともある。