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『帽子のオアオア物語』 Vol.2 うつる帽子の話

『帽子のオアオア物語』 Vol.2 うつる帽子の話

ここでの「うつる」とは、伝染するという意味です。人に、影響を与えてしまう帽子のことです。

だいたい「流行」とは、そういうものでしょう。人が着ているものを見て。「ああ、私もアレが着てみたい!」と思うからこそ、流行がはじまるわけですから。

むかし、金子信雄という俳優がいました。奥様も女優で、丹阿彌谷津子であります。金子信雄は、役者の一方でグルメでもあって。一時期、人気の料理番組をも持っていたほどです。

この金子信雄と友達だったのが、石津謙介。石津謙介はある時、ふっと思いついて、金子信雄にディアストーカーを作って、プレゼント。

金子信雄に行きつけの鮨屋があって。その店のディアストーカーをかぶって行った。と、そこに作家の村松友視が来ていて、「欲しい」。

同じように、つかこうへいも、岩井半四郎も、「かぶりたい」。

結局、石津謙介は、それらの人たちにもディアストーカーを作ってあげたそうです。もし、それが洒落者であれば、人がディアストーカーをかぶっているのを見たら、そりゃあ誰だって欲しくなりますよね。

帽子とは、うつるものなんです。

出石尚三

出石尚三

服飾評論家、ファッション・エッセイスト。国際服飾学会会員。主にメンズ・ファッションの記事を執筆。著書も多数。60年代にファッション・デザイナー・小林秀夫の弟子となったのが、メンズ・ファッションの道に入った最初。幼少期からお洒落好き。好きな作家はサマセット・モーム。好きな画家はロートレック。好きな音楽家はショパン。好きな花は薔薇(ばら)。好きな色はピンク。好きな言葉は「夢」「希望」「愛」。昔の服からふっと新しいアイデアを頂くこともある。