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『帽子のオアオア物語』Vol.8 パーリー・ハットの話

『帽子のオアオア物語』Vol.8 パーリー・ハットの話

パーリー・ハットは、帽子全体を、隈なく、貝ボタンで飾った帽子のことです。

pearly hat と書いて、「パーリー・ハット」と読みます。

もともとはロンドン名物の、「パーリー・キング」から出た習慣なのです。もちろん女性の場合もあって、「パーリー・クイーン」と呼ばれます。

そもそもは十九世紀に遡る古い習慣なのです。露店の市場などで物を売る商人が、服装の一部に貝ボタンを飾ったのが、はじまりだと伝えられています。余談ですが、この貝ボタンは多く日本製だったようです。

商売人ですから、人々から目立つ必要があったのでしょう。しかし、その貝ボタンの飾りは年々と増えて、最後には、服装全体を覆うまでになったのです。上着もチョッキも、ズボンも。さぞかし重かったことでありましょう。

この商売人のことを、「パーリー・キング」とか、「パーリー・クイーン」と呼ばれたのであります。彼らにとっては仕事着であり、また正装でもあったのです。

「服装全体」ということは、帽子にもたくさんの貝ボタンがあしらわれたものです。

キャップの場合にも、ハットの場合にも、あれやこれや、大小様ざまな貝ボタンが装飾された。

今、私たちがすぐにパーリー・キング、パーリー・クイーンになることはできません。が、パーリー・ハットやパーリー・キャップをかぶることはできるでしょう。

ぜひ、パーリー・ハットを作ってもらいたいものですね。

出石尚三

出石尚三

服飾評論家、ファッション・エッセイスト。国際服飾学会会員。主にメンズ・ファッションの記事を執筆。著書も多数。60年代にファッション・デザイナー・小林秀夫の弟子となったのが、メンズ・ファッションの道に入った最初。幼少期からお洒落好き。好きな作家はサマセット・モーム。好きな画家はロートレック。好きな音楽家はショパン。好きな花は薔薇(ばら)。好きな色はピンク。好きな言葉は「夢」「希望」「愛」。昔の服からふっと新しいアイデアを頂くこともある。