『帽子のオアオア物語』Vol.17 パブロ・キャップの話

パブロは、スペインの男性に多い名前ですね。
たとえば、パブロ・ピカソがいるではありませんか。パブロ・ピカソがいるからではありませんが、パブロは天才にふさわしい名前でもあります。
まったくの一例ですが、パブロ・カザルス。パブロ・カザルスは、少なくとも二十世紀最高のチェリストだと考えられています。
そして、もうひとりのパブロが、「パブロ・ネルーダ」。パブロ・ネルーダは、ノーベル文学賞を受けた詩人であります。
このパブロ・ネルーダに想を得た小説が、『ネルーダ事件」。
2008年に、ロベルト・アンプエロが発表した物語。
作者の、ロベルト・アンプエロはその「あとがき」の中に、こんなふうに書いているのです。
「ときには青いハンチングを斜めにかぶり、織り目の美しいウールのポンチョを肩にはおっていることもあった。」
1960年代、著者が少年の頃に見かけたパブロ・ネルーダの着こなしなのです。
やはり天才には、ブルーのハンチングが似合うのでしょうか。
今度、ブルーのハンチングを作って、「パブロ・キャップ」と名づけましょう。
パブロ・キャップは、必ず「斜めに」かぶることですね。

出石尚三
服飾評論家、ファッション・エッセイスト。国際服飾学会会員。主にメンズ・ファッションの記事を執筆。著書も多数。60年代にファッション・デザイナー・小林秀夫の弟子となったのが、メンズ・ファッションの道に入った最初。幼少期からお洒落好き。好きな作家はサマセット・モーム。好きな画家はロートレック。好きな音楽家はショパン。好きな花は薔薇(ばら)。好きな色はピンク。好きな言葉は「夢」「希望」「愛」。昔の服からふっと新しいアイデアを頂くこともある。